対米投融資、LNG計画浮上=採算不透明、関税再引き上げリスクも―トランプ関税

 米国が16日、日本への関税を引き下げた。政府は今後、日米合意に基づく対米投融資5500億ドル(約80兆円)の履行を迫られる。早くも拠出先の一つにアラスカ州の液化天然ガス(LNG)開発計画が浮上しているが、事業の採算性には疑問符が付く。難色を示せば関税率を再び引き上げられるリスクもちらついており、交渉力が試される展開が続く。
 16日午後1時1分、日本に対する相互関税と自動車関税が引き下げられた。赤沢亮正経済再生担当相はこれに先立つ閣議後記者会見で、「合意の着実な実施として歓迎する」と述べた。
 ここからは、日本側の対米投融資の実行が問われる。案件は米側のみで組織する「投資委員会」が見繕いトランプ大統領が選ぶ。日本側は、日本企業が参画する事業の投融資を政府系金融機関が支援する形のため、日本勢が参画しなかったり、巨額損失が見込まれたりする案件には資金を出せない。こうした制約を日米で構成する「協議委員会」を通じて伝えていく。
 米側は、案件選定の動きを見せている。ラトニック商務長官は現地時間11日に出演したCNBCテレビで、アラスカ州のLNG計画が有力な投資対象だとの見方を示した。「大統領が了承すれば、建設作業員を手配し、日本に資金要請を出す」と前傾姿勢だ。
 同計画を巡っては国内最大の発電会社JERA(東京)が「調達」への関心を表明。ただ、パイプライン建設など総事業費は6兆円を超すとされ、日本ガス協会の内田高史会長は「コスト面が心配」と高額調達のリスクに警戒感をにじませる。
 政府は「大赤字のプロジェクトに出資・融資・融資保証はできない」(赤沢氏)と強調してきたが、日本が資金を出さない場合、覚書では大統領が関税を引き上げることもできると明記されている。「トラ」の尾を踏まずに他の投資案件も含めて事業を選別し、目に見える「成果」を米側にアピールしていく、難しい対応を迫られそうだ。 

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