
多摩六都科学館(東京)と高エネルギー加速器研究機構(KEK)などは16日までに、玩具として人気の「スライム」を科学的に分析し、材料の最適な構成比率や、含まれる材料が「伸びやすさ」や「弾力」などに与える影響を明らかにした。論文は7月、KEKレポートに掲載された。
ぐにゃぐにゃした触感で子どもたちに人気のスライム。科学館などの工作教室では、ポリビニルアルコール(PVA)を含む洗濯のりに鉱物のホウ砂を混ぜて作る。PVA分子の間をホウ砂に含まれるイオンが橋渡しして網目構造をつくり、中に水が蓄えられることで独特の触感が生まれる。
多摩六都科学館の学芸員、佐々木有美さんはスライムの形状変化に応じて音色が変わる楽器「スライムシンセサイザー」を製作。豆からとれる高分子「グアガム(GG)」にホウ砂などを混ぜ、試行錯誤を重ねるうち、10メートル以上伸び、弾力性やしなやかさもあるシンセサイザーに最適なスライムを作った。ただ、どの材料がこうした特性をもたらすのか、科学的によく分かっていなかった。
佐々木さんは、2017年に開いた実験教室で知り合ったKEKの瀬戸秀紀名誉教授らと本格的な研究を始めた。材料や比率を変えるなどして、柔軟性や弾力性、伸ばしやすさなどを数値化。さらに、核磁気共鳴(NMR)装置を用いて、分子レベルでの変化も調べた。
その結果、材料に添加したグリセリンが柔軟性や伸縮性を向上させることが判明。また、木工用のボンドを加えると、うどんの「コシ」のような弾力性が生まれ、滑らかでちぎれにくくなることも分かった。こうした効果をもたらす分子構造などが判明したことで、用途に即した代用品を使える可能性も広がった。
スライムのような柔らかい素材は、センサーやロボット、人工筋肉などへの応用も期待される。佐々木さんは「研究を進めるほど分からないことが増えた。スライムの奥深さを感じた」と話している。
〔写真説明〕多摩六都科学館の学芸員佐々木有美さんが開発した10メートル以上伸びる「スライム」(佐々木さん提供)
〔写真説明〕多摩六都科学館の学芸員佐々木有美さんが開発した10メートル以上伸びる「スライム」(佐々木さん提供)
〔写真説明〕多摩六都科学館の学芸員佐々木有美さんが開発した10メートル以上伸びる「スライム」(佐々木さん提供)