
東京都葛飾区柴又の住宅で1996年、上智大4年の小林順子さん=当時(21)=が殺害された事件は9日、発生から29年となった。「娘の無念を晴らすため事件解決への活動を続けていきたい」。未解決のまま容疑者も特定されておらず、遺族らは同日、情報提供を呼び掛けた。
順子さんの父賢二さん(79)は同日午前、警視庁亀有署長ら約20人と共に現場跡地に建てられた「順子地蔵」に花を手向け、冥福を祈った。賢二さんは「私たちが最も恐れているのは事件の風化。日々、事件解決を期待し、夢見ながら生活している」と語った。近くの京成柴又駅では、事件概要などが書かれたチラシとメモ帳を配布した。
事件は96年9月9日夕に発生。住宅が全焼し、2階から手足を縛られ、首や顔を果物ナイフのようなもので刺された順子さんの遺体が見つかった。順子さんは2日後に米国留学を控えていた。
捜査本部によると、現場から血液型A型の男の血痕が採取されたほか、事件直前には住宅付近で黄土色っぽいコートと黒いズボン姿の不審な男が目撃されていた。
警視庁はこれまでに延べ約12万700人の捜査員を投入。今年8月末までに計1783件の情報が寄せられたが、容疑者特定には至っていない。
捜査本部は新たに、不審な男の等身大パネルを作成し、公開。ポスター8100枚を駅やコンビニなどに掲示し、チラシ3万2000枚を新聞に折り込むなどして情報提供を呼び掛ける。
岡部誠幸捜査1課長は「年月の経過が捜査を困難にしているのは否めないが、必ず犯人を検挙するという執念で捜査している。ささいな情報や断片的で不確実な情報でも通報して」と訴えた。情報提供は亀有署03(3607)0110まで。
〔写真説明〕上智大生殺害事件について、情報提供を呼び掛けるチラシ
〔写真説明〕上智大4年の小林順子さんが殺害され、自宅が放火された事件から29年がたち、通行人に情報提供を呼び掛ける警視庁の小山正治亀有署長(右)=9日午前、東京都葛飾区
〔写真説明〕上智大生殺害事件の現場付近で目撃された不審な男の等身大パネル=1日、東京都千代田区
〔写真説明〕上智大4年の小林順子さんが殺害され、自宅が放火された事件から29年となり、自宅跡地で情報提供を呼び掛ける父賢二さん=9日午前、東京都葛飾区