「98年の危機」再来懸念も=識者、現地メディア指摘―インドネシア

 【ジャカルタ時事】インドネシアで続く反政府デモを受け、スハルト政権崩壊につながった「ジャカルタ暴動」が起きた1998年のような事態の再来を懸念する声が出ている。デモは落ち着きつつあるが、識者は、政府が格差の拡大や経済減速といった根本的な原因に対処しなければ、当時のような「多次元的な危機」が起こり得ると警告している。
 ジャカルタ暴動は98年5月、経済状況悪化を受け反政府デモが拡大する中で発生。デモに参加した学生4人が治安部隊に射殺されたことで暴動が起き、1000人以上が死亡したとされる。スハルト大統領退陣の引き金となった。
 高額な国会議員手当への反発に端を発する今回のデモの背景にも、経済状況への不満がある。8月25日に始まった大規模デモは、28日にバイクタクシー運転手の男性が警察車両にひかれて死亡したことで激化し、放火や略奪に発展。全国で10人の死者が出た。
 有力紙テンポ(電子版)は8月31日、「デモの波は98年のように拡大するか」と題した記事を配信。「30年近くたち、再び同じような状況になった」との見方を示した上で、「デモ沈静化に向けたプラボウォ政権の取り組みは、やり方を間違えれば逆効果となる」と警鐘を鳴らした。
 プラボウォ大統領は同日の記者会見で、公共施設の破壊や個人宅の略奪には「断固たる措置」を取るよう警察と軍に指示したと明らかにした。その後、ジャカルタの街中には軍人が増え、狙撃手も配置されたと伝えられた。
 政権側は譲歩の姿勢も見せる。国会議員手当の見直しを決めたほか、学生団体や労働組合からも意見を聴取。今後は、具体的な政策転換がなされるかが焦点となる。
 インドネシアのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のデニ・フリアワン上級研究員は、「今回のデモは、国民に寄り添わない国家への失望が積み重なった結果だ」と指摘。「政府が起きていることから目を背け続ければ、97~98年のような多次元的な危機につながる可能性がある」と訴えた。 
〔写真説明〕インドネシア議会前でデモに参加する学生ら=4日、ジャカルタ(AFP時事)
〔写真説明〕インドネシア・西ジャワ州議会議事堂の門にごみを投げ捨てるデモ参加者=4日、バンドン(AFP時事)

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