
トランプ米大統領が日本への関税率を修正する大統領令に署名したことで、7月の日米合意後も続いた混乱は収束に向かう。懸案の自動車関税は「最大で2週間後」(赤沢亮正経済再生担当相)には現在の27.5%から15%に引き下げられる。それでも一連のトランプ関税導入前と比較して大幅な高関税が継続。輸出産業を中心に事業者への丁寧な説明と実効性のある支援が求められる。
「『やっと』というのが正直な感想だ」。ラトニック米商務長官らとの交渉を終えた赤沢亮正経済再生担当相は記者団の取材に応じ、胸をなで下ろした。大統領令では合意に反して15%が上乗せされている相互関税の適用方法も修正された。ただ、一連の関税措置が撤廃されたわけではなく、赤沢氏は「わが国産業にダメージが生じている」ことが積み残しの課題だと指摘した。
政府は、企業から相談を受け付けており、資金繰り支援などを通じて雇用への悪影響を抑える方針。ただ、衆参両院で少数与党となり、石破茂首相の進退を巡って自民党内の混乱も続く中、機動的な経済対策を打てるのか不安が広がる。
農林水産省が5日午前、仙台市で開いた米関税に関する説明会では、出席者から「先行きの不透明感が心配の種という話が出る。正確な情報をタイムリーに発信してほしい」(仙台商工会議所の藤崎三郎助会頭)といった注文が相次いだ。
水産加工業の北三陸ファクトリー(岩手県洋野町)の下苧坪之典最高経営責任者は、輸出向け商品の導入が「先延ばしになっている」と話し、「(高関税で)非常に厳しい状況」と訴えた。
赤沢氏は今回発表された共同声明や大統領令の内容に関し、「7月22日の合意と何ら変わっていない」と説明した。だが、共同声明に盛り込まれたミニマムアクセス(最低輸入量)枠内で米国産のコメ輸入を75%拡大する取り組みについて、日本側はこれまで「需給状況なども勘案しつつ、必要なコメの調達を確保する」としか説明してこなかった。事業者が正確な状況を把握するためにも政府の説明責任が問われる。
〔写真説明〕農林水産省が開いた米関税措置に関する事業者への説明会=5日午前、仙台市青葉区