「紛争解決」に関税=新たな経済的威圧―「実績」誇るトランプ米大統領

 【ワシントン時事】トランプ米大統領が、関税の脅しを各地の紛争仲裁交渉のカードとして活用し、前例のない成果を挙げているとの主張を強めている。トランプ氏は1月の2期目就任以降、関税をてこに各国に要求を突き付けてはきたが、武力衝突の解決手段として関税を持ち出す手法は、米国による「経済的威圧」の新たな形とみる向きもある。
 トランプ氏は8月25日、ホワイトハウスで記者団に「私が止めた七つの戦争のうち四つは、関税を手にしていたためにそうできた」と誇らしげに語った。「『戦いたいならそれで構わないが、米国と貿易する際は100%の関税を課すぞ』と言うことができた。それで皆が諦めた」
 トランプ氏が挙げる「七つの戦争」とは、5月のインド・パキスタン間の衝突、7月のタイ・カンボジア間の国境地帯での紛争などだ。
 このうちタイ・カンボジアの衝突では、両国に対する米国の36%の相互関税について、戦闘停止まで引き下げ交渉に応じないとトランプ氏が警告し、停戦の一因になったと報じられている。インド・パキスタン間の紛争に関しては、現状では高関税を課すことになるとインドのモディ首相らに告げた「約5時間後」に、停戦がまとまったというのがトランプ氏の言い分だ。
 トランプ政権は2期目発足後、貿易不均衡を理由に日本など同盟国を含む各国への相互関税賦課を発表。さらに米国への合成麻薬の流入対策を怠っているとして、カナダとメキシコ、中国に追加関税を発動した。トランプ氏の最近の発言は、これらに加え、軍事衝突の解決という経済とは関係の薄い政策目的と関税を直接結び付けたものだ。
 ただ、紛争終結を導く関税の効用を検証するのは困難だ。モディ氏は「米国の仲介は受けていない」とトランプ氏の果たした役割を否定した。
 米国に実際に関税を発動する意思があるかも不明だ。トランプ氏はウクライナ侵攻を続けるロシアの資金源を断つため、同国産原油を購入する中国に「2次関税」を課す構えをみせたが、「ロシアと無関係な他の多くの事柄に影響する」(バンス副大統領)として現時点で見送っている。中国との関税戦争激化を懸念しているもようだ。
 8月29日には、米連邦控訴裁が相互関税は違法と判断。米国内法上も関税への疑義が生じている。 
〔写真説明〕トランプ米大統領=8月25日、ワシントン(AFP時事)

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