
正しい左折方法を理解していることは、クルマを運転する上での基本中の基本ですが、自転車レーンがある場合の正しい左折方法を知る人は少ないのではないでしょうか。自転車への反則金導入を前に、自転車ユーザーも法令を理解しておく必要がありそうです。
自転車レーンは「車線」です!
交差点で左折をするときは、ウインカーで合図して、手前であらかじめ左端に寄って、徐行して曲がり切る――当たり前すぎる運転方法ですが、では、その交差点の直前まで自転車レーンがあった場合の左折方法はどうでしょうか。
道路左端の路面が青くペイントされた自転車レーンが、都内の道路ではかなり増えました。これは正式には「普通自転車専用通行帯」と呼ばれ、車道の一部ですが、普通自転車(特定小型原付を含む)以外の四輪車やバイクは通行することができません。
道路交通法で規制を担当する警察庁交通企画課は、自転車レーンの位置付けをこう説明します。「普通自転車専用通行帯は第1通行帯です」――
では、四輪車やバイクは交差点での左折時に、この自転車レーンをどの ように認識しているでしょうか。実際の交差点に立ってみてみると、ほとんどの車両は、自転車レーンをまたぐように左へ寄せて信号待ちをする様子はありません。自転車しか通行できない通行帯に入ることを、何となく避けているような気がします。
しかし、この運転方法は道路状況によって正しかったり、違法だったりします。
左折時に気を付けなければならないのは、巻き込み事故です。左折時に左側の間隔を開けていると、そのスキマに自転車が直進する可能性があります。そのため道路交通法は交差点における左折方法を定めています。道路企画課は左折方法についてこう説明します。
「車両が左折するときは、普通自転車専用通行帯を通行し、道路の左側端に寄る必要があります」
自転車レーンは自転車が通行する“車線”です。それにも関わらず、左折時には自転車レーンに入らなければならない。これは自転車にとっても、クルマやバイクにとっても意外なことかもしれません。
自転車レーンに「入っちゃダメ」なときとは?
道路交通法が定める左折方法は、あらかじめ左側端に寄ることが原則です。ただ、運転者の体感としては、原則以外の指定区間が多いことも事実です。前述、交通企画課はこう説明します。
「道路交通法第35条第1項の規定により、交差点の前に『進行方向別通行区分』が設けられていると考えられる区間では、普通自転車専用通行帯を通行できる車両以外の車両は、左折を指定された車両通行帯を進行して左折する」
進行方向別通行区分は、左折・直進レーンや右折レーンなど進行方向を示した車線のこと。指定によっては歩道側2車線が左折専用になっている場合もあります。左側端に寄ることなく通行できるのは、標識で左折レーンを指定されているからです。
自転車が「自転車レーンを出ちゃダメ」なときも
ただ、交差点によっては、進行方向の指定標識が設置されているだけでなく、自転車レーンと車道を区分する道路標示が、白色の実線ではなく、黄色の実線で区分されている場合があります。
「(黄色の実線は)進路変更禁止となり、車両は標示を越えて進路を変更してはならないことになります」(前同)
ここまではクルマやバイクの運転車目線でしたが、黄色の実線で区分されている場合は、自転車の運転者も注意が必要です。自転車レーンをはみ出て運転することが許されません。
また、自転車レーンが設置された区間でも、交差点内では道路標示が、進行方向を示す「矢羽根型路面標示」に変わっています。特に注意が必要なのは、わかりやすい十字路ではなく、交差点内でもしばらく直進が続くような変則交差点です。こうした交差点での運転について、交通企画課は次のような運転を求めています。
「交差点内においては、通行すべき部分が指定されている場合を除き、できる限り左側端に沿って進行することになります。矢羽根型路面標示は、法定外標示であって、上記の左折方法に影響することはありません」
つまり、自転車の運転者が進路を変更せずに交差点に進入したとしても、クルマやバイクがその進路上にふさがって左折の準備に入る可能性がある、ということです。
自転車にもクルマと同じように求められる交通ルール
矢羽根型路面標示は、逆走防止などを狙って自転車の運転者に対して進行方向などを示す案内表示です。自転車レーンから矢羽根型路面標示に変わった時点で、クルマやバイクの運転者は、自転車の巻き込みに注意して左側端に沿った左折を心がける必要があります。
自転車に対する反則金導入を前に道路環境も急速に変わり、「自転車は原則、車道」という交通ルールを適用する準備が進んでいます。肝心な法令は、自転車を含めた道路利用者それぞれが知っておくことが前提です。
一方、道交法は毎年のように改正が加えられています。利用者だけでなく、地方自治体や警察行政も、すべての利用者に対する新たな周知の手段を考える必要に迫られています。