
【北京時事】日中はあらゆる分野でしのぎを削っている。日本政府は新幹線の輸出を成長戦略の重要な柱の一つと位置付ける一方、近年は中国も高速鉄道の輸出を加速。建設のスピードや低コストを強みとする「中国式」に、日本が競り負けるケースが出始めている。
「(諸外国を)追う立場から、世界をリードする立場に変わった」。中国共産党機関紙の人民日報は7月の論評記事で、中国の高速鉄道の発展をこう自賛した。
中国は2004年以降、川崎重工業など海外各社から技術供与を受け、高速鉄道網の整備を加速させた。17年には独自に開発したと主張する鉄道車両「復興号」を北京―上海区間に投入。「鉄道大国」を世界へアピールした。
この頃から輸出に向けた動きを本格化させており、21年には国内路線を延長させる形で「中国ラオス鉄道」を開業。23年にはインドネシアの首都ジャカルタ―バンドン区間も開通させた。インドネシアの鉄道受注は日中が激しく競合。当時インドネシアに駐在した日本の元外交官は「中国から何度も要人がジャカルタを訪れていた」と振り返り、政治力で日本が競り負けたとの認識を示す。
中国ラオス鉄道の拠点駅がある雲南省昆明では7月、大勢の中国人に加え、外国人観光客の姿が目立った。ラオスで乗車したという英国人男性は、欧州域内の路線と「乗り心地は遜色ない」と、感想を口にした。ラオスでは鉄道整備を追い風に、一気に中国資本が流入している。
中国の高速鉄道網は24年末時点で約5万キロと、日本の新幹線網(3300キロ)の15倍近くに膨らんだ。北京の外交筋は、中国が既に鉄道車両の製造技術などで世界トップクラスだと指摘。政府も輸出を増やす方針のため、中国と政治的な摩擦がない国では「中国製が有力な選択肢になる」との見方を示す。
中国国家鉄路集団(国鉄)は24年12月、世界最速の時速400キロで営業運行可能な新型車両「CR450」の商業運行を近く始めると発表。実用化を日本が急ぐ超電導技術を使った鉄道についても、研究を加速している。
〔写真説明〕駅に停車する中国の高速鉄道の車両=2024年3月、湖北省武漢