モルヒネ匹敵の鎮痛薬開発=依存性など副作用なし―「医療現場に変革」・京都大

 京都大の研究グループは4日、がん患者に処方されるモルヒネに匹敵する鎮痛作用がある一方、依存性や呼吸抑制といった重篤な副作用のない鎮痛薬「ADRIANA」を開発したと発表した。
 研究グループは、モルヒネなど合成麻薬(オピオイド)とは全く異なる仕組みで作用する画期的な鎮痛薬として、「医療現場での疼痛(とうつう)管理の方法を根本的に変革する可能性がある」と強調。過剰摂取により多数の死者が出るなど「オピオイドクライシス」と呼ばれる社会問題の解決にもつながるとしている。論文は同日、米科学アカデミー紀要電子版に掲載された。
 研究グループによると、ヒトは生命に危機が及ぶ状況に陥ると、脳から分泌される神経伝達物質「ノルアドレナリン(NA)」が作用して痛みが抑えられるが、自らNAの過剰な分泌を防ぐよう制御されている点に着目。新たな研究技術を導入し、こうした制御を遮断する薬剤を世界で初めて見いだすことに成功したという。
 2023年1月~24年12月、京都大病院で臨床試験(治験)を実施。肺がん手術後の患者20人などで一定の有効性を確認。26年には米国で手術後の患者400人を対象に治験を行う予定で、28年の実用化を目指す。
 京都大医学研究科の萩原正敏特任教授(創薬医学)は「オピオイドを使わざるを得ないがん患者らが、依存性や重篤な副作用を気にすることなく、痛みに苦しまない生活を送れるようにしたい」と話している。 
〔写真説明〕京都大の看板

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