迫害逃れた「メリーちゃん」人形を展示 群馬県太田市

 群馬県太田市の新田荘歴史資料館で、昭和初期に米国から日本へ親善のために贈られた人形が展示されている。計1万2739体が全国の学校などに贈られたが、多くが太平洋戦争期の感情悪化で破壊されたり、空襲で焼失したりした。市内に残る人形は、「メリーちゃん」と呼ばれるこの1体のみだという。
 日系移民が増えた米国で排日運動が進む中、両国の関係悪化を憂慮した米国のシドニー・ギューリック博士が、人形交換による親善活動を提唱。賛同した渋沢栄一が日本側の窓口となって活動を進めた。メリーちゃんは1927(昭和2)年、同市の韮川小学校に贈られ、開戦後は当時の校長がひそかに保管し、終戦まで守り続けたという。
 資料館では、戦時の地図や新聞などの資料のほか、メリーちゃんが贈られた頃に同小に通い、その後戦死した男性の写真も展示。男性の親戚で、展示を企画した学芸員の前沢哲也さんは、「当時の子どもが、後に人形の母国と戦うことになった。仲良くすることの大切さや、戦争の愚かしさを知ってほしい」と話している。展示は8月31日まで。【もぎたて便】

〔写真説明〕新田荘歴史資料館で展示されている「メリーちゃん」人形=7月23日、群馬県太田市

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