
自民党の森山裕幹事長が、惨敗した参院選の総括後に引責辞任する意向を示唆した。石破茂首相(党総裁)を支える自身の責任を明確にすることで「石破降ろし」の沈静化を図る狙いがある。ただ政権の屋台骨である森山氏の代わりを探すのは容易ではなく、続投方針を堅持する首相への打撃は必至。党幹部の「辞任ドミノ」を誘発する可能性もあり、政権の先行きにますます暗雲が垂れ込めている。
「首相のことをいろいろ申し上げる立場にはない。自らのことはきのう発言した通りだ」。森山氏は29日の記者会見で、首相と自身の進退を問われ、こう述べるにとどめた。
28日の両院議員懇談会で、首相は「国家、国民に尽くす思いで、この先臨みたい」と重ねて続投意欲を表明。対照的に、森山氏は8月中に取りまとめる参院選総括を受け「幹事長としての責任を明らかにする」と引責辞任の可能性に触れた。
森山氏は懇談会に先立ち、28日に首相経験者の麻生太郎、菅義偉、岸田文雄各氏にそれぞれ面会。敗戦の責任を取る考えを伝えたもようだ。「3重鎮」は23日に首相と一堂に会した際、続投を支持する姿勢は見せなかった。自民ベテランは、参院選の直後に森山氏が辞意を示せば首相に責任論が飛び火する可能性もあったと解説。「総括後に責任を取ると言うのはうまいやり方だ」と、「石破降ろし」の拡大に歯止めをかける狙いがあったとみる。
森山氏は昨年10月の衆院選で「裏金候補」への2000万円支給を主導したとされるなど、政治手腕を疑問視する向きもある。一方で中央省庁や、野党各党に張り巡らせたパイプを通じ、少数与党の国会運営を切り盛りしてきたのも事実だ。
25日夜には、首相に近い村上誠一郎総務相、岩屋毅外相、中谷元防衛相、赤沢亮正経済再生担当相、平将明デジタル相らが会合を開き、首相続投への支持を確認した。ただこうした顔触れと比べても、「森山氏の代わりは簡単には務まらない」(自民中堅)との声がある。すでに木原誠二選対委員長は自身の進退に言及。執行部周辺は「森山氏辞任で執行部は総崩れする」と懸念している。
森山氏の真意をいぶかしむ向きもある。ある閣僚は、8月に戦後80年の節目となる広島・長崎の平和式典や終戦記念日に加え、20日から横浜でのアフリカ開発会議(TICAD)が控えていると指摘。「その後に参院選総括をまとめ、首相は退陣表明せざるを得ない。森山氏も同じ考えのはずだ」と語った。
〔写真説明〕記者会見する自民党の森山裕幹事長=29日、東京・永田町の同党本部