
政府は、引き取り手のない遺体の火葬や埋葬費用について、相続人の意思を確認しなくても、市区町村が死亡者の預貯金から充当できることを自治体と金融機関宛てに通知した。これまで預貯金を引き出せない場合、市区町村が負担していた。引き取り手のない「孤立死」の件数が増加傾向にある中、市区町村の負担軽減を図るため運用を明確化した。
ライフスタイルの変化などに伴い、一般世帯に占める単身世帯の割合は1995年の25.6%から2020年には38.0%に増加。65歳以上の高齢者の単身世帯も5.0%から12.1%に倍増した。総務省によると、引き取り手のない死亡者数は18年4月~21年10月で計10万5773人に上る。
独り暮らしの高齢者が亡くなるなど、死亡者の火葬や埋葬を行う人がいない場合、費用は死亡者の預貯金を充てると法律で規定。不足する場合は市区町村が負担することになっている。
ただ、死亡者の口座から預貯金を引き出す事務は、市区町村と金融機関の調整に委ねられているのが実態。相続人以外には出金しないとして引き出せなかったり、各金融機関で求められる書類が異なって事務が煩雑だったりと市区町村の負担となっていた。
このため厚生労働省などは、引き取り手のない人の遺留金などの取り扱いの手引を改定。各市区町村が金融機関に提出する書類の様式案を新たに盛り込み、今月23日付で通知した。埋火葬費として死亡者の口座から預貯金を引き出す際に、相続人への意思確認が不要であることも改めて強調した。
この問題を巡っては、24年に34団体から地方分権改革の一環としてルールの明確化などが提案されており、政府は対応を検討していた。
〔写真説明〕東京・永田町の首相官邸