マドゥロ大統領、強権振るう=米とディール実現―「3選」宣言から1年・ベネズエラ

 【サンパウロ時事】南米ベネズエラで反米左派のマドゥロ大統領が「3選」を宣言した大統領選が行われてから28日で1年。マドゥロ氏は選挙が不正に行われたという批判を無視して強権を振るう一方、外交では敵対してきた米国との間で「ディール(取引)」を実現。長期政権を視野に、大統領として実績を積み重ねる形となっている。
 「マドゥロ政権が残忍な弾圧の波を放った」。野党指導者マリア・コリナ・マチャド氏は22日にX(旧ツイッター)への投稿で、過去72時間に20人以上が行方不明になったり、拘束されたりしたと指摘した。大統領選前後から、野党の幹部や支持者に対する弾圧が続いている。マチャド氏は「国際司法(の枠組み)が加害者の責任を追及する義務がある」と訴えたが、ウクライナ侵攻や中東情勢などに世界の関心が向かう中、国際社会の動きは鈍い。
 抑圧の対象となっているのは野党勢力だけではない。米紙ニューヨーク・タイムズによると、過去数カ月間で20人以上のエコノミストらが拘束された。ベネズエラは年率100%を超えるインフレに見舞われているとされ、「政権にとって都合の悪い経済ニュースを統制する」(同紙)ことが拘束の目的という。
 外交面で、マドゥロ氏はトランプ米政権との交渉で渡り合い、ディールを成立させた。今月、米国でギャング構成員と見なされたベネズエラ人移民252人と、マドゥロ政権が拘束していた米国人10人を交換することで米側と合意した。
 これをきっかけに、ベネズエラに圧力をかけてきたトランプ政権は対話姿勢に転じつつある。米政府は5月に米石油大手シェブロンのベネズエラでの事業許可を取り消したが、再び操業を認める方向で検討していると報じられている。
 対米関係が安定に向かう中、マドゥロ氏は来年1月の議会に提出する方針の憲法改正案に選挙制度改革を盛り込むとみられている。マドゥロ氏に有利な制度への変更が行われる見通しで、「選挙を通じて権力を確実に維持できるようにすることを目指している」(専門家)との観測が浮上している。 
〔写真説明〕ベネズエラのマドゥロ大統領=5月25日、カラカス(AFP時事)

externallinkコメント一覧

コメントを残す

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)