ダイハツ版GT-R!「夢と狂気のストーリア」生産数わずかの超絶レア車を千葉で発見!「こりゃバケモノだわ…」

実用性の高い軽自動車を得意とするダイハツですが、今から30年ほど前に全日本ラリー選手権で勝つために、「羊の皮をかぶった狼」的なクルマを開発していました。その走りは、まさに小さな怪物そのものでした。

軽自動車を得意とするダイハツの意外な顔

 自動車大手のダイハツに対する一般的なイメージは、「軽自動車のメーカー」や「手頃な価格の実用車を作るメーカー」といったところではないでしょうか。事実、同社は軽自動車や小型車を得意としており、そのラインナップには高級車などはなく、スポーツカーも軽自動車規格の「コペン」ぐらいしかありません。

 しかし、それとは裏腹に評論家や専門家のあいだでは、ダイハツは斬新でユニークな商品開発能力や精錬されたカーデザイン性が高く評価されています。また、最終的にはコンセプトカーで終わったものの、バブル期にはユーノス「ロードスター」の対抗馬として、FRライトウェイトスポーツカー「X-021」をレーシングコンストラクターの童夢とのコラボで開発するなど、意外にもエンスージアストなメーカーでもあるのです。

 そのようなダイハツ車のなかでも、マニア心をくすぐるようなスピリットがもっとも激しく炸裂した1台が、1998年4月に発売した「ストーリアX4」でした。

 このクルマのベースは、2か月前の1998年2月にデビューした「ストーリア」です。このクルマは経済性を重視した1リッター直列3気筒エンジンを搭載し(2000年3月にスポーティな1.3リッター直列4気筒エンジンを追加)、ファニーなフロントマスクと丸みを帯びたフォルムが特徴のFF(フロントエンジン前輪駆動)コンパクトハッチバックです。

「ストーリア」は1998年9月から「デュエット」と名を変えてトヨタへもOEM供給され、カローラ店で販売されました。ただし、販売力の差もあって本家である「ストーリア」よりも「デュエット」のほうが出荷台数は大きく勝っていました。

 そのような両社の関係性から、2001年12月のマイナーチェンジではトヨタの意向により同世代の「カローラ」に似たフロントグリルを持つマスクへと変更されます。結果、とぼけた表情の愛くるしいマスクが失われたことで、ダイハツのオリジナリティが幾分薄れてしまいました。

全日本ラリー選手権で勝つために誕生

 そのようなファミリー向けのコンパクトカー「ストーリア」をベースに、過激なチューニングを施したモータースポーツベース車が「ストーリアX4」です。このクルマが誕生した背景には、販売面でライバル関係にあったスズキとダイハツが死闘を繰り広げていた全日本ラリー選手権Aクラスの存在がありました。

 1980年代後半から1990年代にかけては軽自動車を使ったラリーやダートトライアルが盛んで、こうした競技ではスズキ「アルトワークス」が圧倒的な強さを見せていました。これに対抗すべく、ダイハツが送り出したのが「ミラTR-XX」でしたが、戦闘力不足で惨敗。業を煮やしたダイハツは、エンジンやトランスミッション、マフラーの交換および改造が禁止されていたレギュレーションを逆手に取って、工場出荷時の段階でラリーに勝つための装備が与えられた「ミラX4-R」を登場させ、1991年のシーズンで圧倒します。

 しかし、とうぜんスズキも黙っていません。1992年にはダイハツ打倒のため「アルトワークスR」を投入。加えて富士重工(現SUBARU)も1993年から「ヴィヴィオRX-RA」を参戦させたことで、スズキ・ダイハツ・富士重工の三つ巴のバトルは加熱していきます。これを受け、次第に「ミラX4-R」は性能的な陳腐化により苦戦を強いられるようになりました。

 そこで全日本ラリー選手権Aクラス制覇を目論んだダイハツが、軽自動車に代えて登場させたのが「ストーリアX4」でした。

 このマシンは競技のレギュレーションに照準を合わせて、1.4の加給係数をかけると排気量1000cc以下に収まるように、「ミラX4-R」用のJB-JL型660cc直列4気筒DOHCターボエンジンを713ccまでストロークアップしたJC-DET型を搭載。このエンジンは鍛造ピストン&クランクシャフト、ヘッド直付けタイプインジェクターなどを備える競技用スペシャルモデルです。

「ストーリアX4」の極上車が千葉の中古車店にあった!

 小排気量ながら、ブースト圧1.2kg/cm2の工場出荷値で120psもの最高出力を叩き出しました。組み合わされるギアボックスはクロスミッションの5速MT、駆動方式はフルタイム4WDのみで、前後LSDやメタルクラッチ、強化サスペンションなど、勝つために必要なパーツは標準装備されていました。

 一方、競技仕様ということで快適装備はほとんどなく、パワステやパワーウインドウ、エアコン(のちにオプションで装着可能になります)などは軽量化を徹底するために装備していません。これにより車重は840kgと軽く、小型車ベースとなったことでトレッドやホイールベースも最適化されたことと相まり、ラリーやダートトライアルで活躍しました。

 たとえるなら「ストーリアX4」は、まさに競技に勝つためのダイハツ版「GT-R」あるいは「ランエボ」といった位置づけと言えるでしょう。ただ、そこまでのストイックさゆえに、カタログモデルだったものの生産台数は月間10台ほどで、累計生産台数は約800台。しかも、その多くが競技で使い潰されたことで残存数は極めて少なく、現在では幻のマシンとなっています。

 そのような希少車が、千葉市花見川区にある「BAKUYASU AUTO(バクヤスオート)」千葉北本店にあるというので、今回取材しました。

 当該車は2000年式で、走行距離こそ16万6000kmと少々多いもののコンディションは良好です。社外ホイールと車高調整式サスペンション、社外シートが装着されている以外はほぼオリジナルのままで、修復歴はありません。そして、オプションのエアコンも装備しています。

 なお、販売価格をセールススタッフに尋ねると、車両本体価格は98万円で、支払総額は108万円とのことでした。

「BAKUYASU AUTO」では、ほかにもう1台、2001年型の「ストーリアX4」を在庫しているそうです。滅多に出会うことのない幻のマシン。「小さな怪物」に乗ってみると、クルマに対する価値観が変わるかもしれません。

(取材協力:BAKUYASU AUTO千葉北本店)

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