「日本に帰りたい」米国に行って初めて感じた“リアル” 全英シニアOPで自信を取り戻す!【藤田寛之の“人生付録記”】

昨年の「全米シニアオープン」で2位に入り、米シニア「PGAツアー・チャンピオンズ」のプレーオフシリーズに進出。2戦目で3位に入りポイントを上積みし、今季のフルシード権を得た藤田寛之。この第二の人生とも言える挑戦を『人生の付録』と表す。そんな米戦記を追っていく。(取材/構成・高木彩音)

みなさん、こんにちは。藤田寛之です。前戦の「ディックスオープン」を終えて、先週はオープンウィークでした。今週の海外メジャー「ISPS HANDA シニアオープン」(全英)に向けて、体調も含めてしっかりと準備を整えてきました。

実は「全米シニアオープン」を終えたとき、アメリカに来てから初めて「日本に帰りたい」と口にしてしまいました。最近、よく話しているとおり、ゴルフの調子がなかなか上がらず、結果も出ていない状況が続いています。ショットの不調と向き合う毎日に、少し気持ちが落ち込んでしまったことや、解決策を見つけたいという思いからでした。

そんななか、前回の試合の最終日には、新しいことにもチャレンジしてみました。僕はフェードヒッターですが、最近はクラブが下から入りすぎて、意図しないドロー回転がかかってしまうのが悩みです。そこで、強制的にフェードが出るように意識してカット軌道で打ってみたのですが、それでもなかなか理想のボールが出ず…。スイングの振り感は良くなったものの、ボールはまだ左へ行ってしまう。なかなか難しいものです。
僕たちは、スイングの良し悪しも大事ですが、やっぱり「ボールがどう飛んでいくか」がすべて。時間に余裕がある時ならスイング修正に取り組めますが、シーズン中は“スイングよりも弾道”を重視しなければいけません。実際、いまのパーオン率ではスコアを伸ばすのが難しい。今回のように無理やりアレンジするのではなく、もっと自然に安定したショットが打てるよう、調子を取り戻していきたいと思っています。

今回、動画だけでは判断が難しい部分もありましたが、芹澤(信雄)さんにスイング動画を送ってアドバイスをいただきました。いくつかの指摘をもらえて、とてもありがたかったです。今は本当に、日々が試行錯誤の連続です。「なんでこのタイミングで…」という思いも正直あります。でも、これが現実。少しずつでも良い方向に進めるしかありません。日本にいる時は、すぐに芹澤さんにスイングを見てもらって、“モヤモヤ”を晴らすことができていたんだな、と改めてそのありがたみを実感しています。

こちらでは、自分で判断して、自分で処理しなければならない。正しいのか間違っているのかもわからない中でやっていくのは、やはり辛いですね。これだけ長くゴルフをやってきたのに、いざ一人になるとこうなるのかと。改めて、これまでいかに恵まれた環境にいたのかを痛感しています。
とはいえ、シーズンは続きます。1週間だけのオフで帰国するのは現実的ではありませんし、こうして芹澤さんに動画で見ていただける環境があるのは本当に心強いです。今ある環境のなかで、自分にできることをやっていきたい。そして、応援してくださっている皆さんに、一日も早く“いいニュース”を届けたいという気持ちで頑張っています。

結果を求めてしまうのが正直なところですが、一方で、いま自分が立たせてもらっているこの舞台は、誰もが立てる場所ではない。そう思えば、とても幸せなことだとも感じます。基本的にはその思いを大切にしながらも、シーズンも後半戦に入ってくるなかで、「来年も数試合でもいいから、またここで戦いたい」というのも本音です。

ここアメリカでプレーするにあたり、スポンサーや応援してくださっている方々の存在があります。その方たちに、まだ納得のいく結果を届けられていないことが、すごく申し訳ない気持ちでもあります。たとえ優勝じゃなくても、「頑張ったね」と言ってもらえるような結果を残したい。それが、今の一番の目標です。

取材ではよく、「目標は?」「シードは?」と聞かれますが、それらはあくまで結果としてついてくるもの。自分にできるのは、一日一日、ゴルフのコンディションを少しでも良くしていくことです。以前も言いましたが、「きのうよりきょう、きょうよりあした」。その積み重ねが成長につながると信じています。これまでもそうしてきましたし、これからも変わらずやっていきます。
「調子が悪い時に何か新しいことに取り組みますか?」と聞かれることもありますが、ゴルフへの姿勢そのものは、この30年まったく変わっていません。調子が良くても悪くても、優勝した翌日も、悔しくて結果が出なかった翌日も、僕は同じように月曜日を過ごします。スイングには大胆に変化を加えることもありますが、ゴルフに対する向き合い方は、ずっと変わらずにここまで来ました。

いろいろと語ってしまいましたが、これが今の僕の正直な気持ちです。アスリートとして、僕たちの姿や言葉、頑張っている雰囲気を通じて、誰かの励みになれたらうれしいです。もちろん一番は、“いいニュース”を届けることですけどね。

さて、いよいよ今週は全英シニアオープンが開幕します。日本からこの大会に出るには、シニアツアーの賞金ランキングでトップ2に入らなければならず、ハードルも高い。でもだからこそ、出場できることに喜びを感じています。今年も、昨年のランキングによってこの舞台に立てることが、本当にうれしいです。今の自分の状況を考えると、少しでも賞金を加算したい。まずは予選通過、そして1つでも上の順位を目指して頑張ります。引き続き、応援よろしくお願いいたします。

externallink関連リンク

藤田寛之 プロフィール&成績 『55歳から始まった藤田寛之の“人生付録記”』を一気読み! PGAチャンピオンズツアー 2025年日程一覧 全英OP優勝のS・シェフラーは約4億5880万円獲得 松山英樹ら日本勢が稼いだ額は? 全盛期のタイガーを彷彿とさせる活躍 最強シェフラーが見せた全英圧勝劇に選手たちの本音は?
externallinkコメント一覧

コメントを残す

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)