
【北京時事】中国の王毅共産党政治局員兼外相は10、11両日、マレーシアの首都クアラルンプールで東南アジア諸国連合(ASEAN)の関連外相会議に出席した。トランプ米政権と関税を巡る攻防が続く域内諸国が中国に不利な通商合意を結ばないようつなぎ留めを画策。会議にはルビオ米国務長官も出席し、米中が影響力を競う綱引きが繰り広げられた。
「わが国は信頼できるパートナーだ」。10日の関連会議に別々に出席した王氏とルビオ氏は、くしくも同じ表現でASEANに語り掛けた。
王氏が「中国にとってASEANは近隣外交の最優先事項だ」と力を込める一方、ルビオ氏は「インド太平洋は米外交政策の焦点だ」と強調。「米国が他地域の出来事に気を取られていると耳にすると、そんなことはあり得ないと言いたくなる」とも語った。
王氏は各国外相との個別会談で、高関税政策を掲げる米国が「(東南アジアの)正当な発展の権利を奪おうとしている」などと批判。マレーシアやカンボジアの外相からは、対米交渉の過程で「第三者(中国)の利益を犠牲にしない」との言質を得た。
習近平政権が警戒するのは、トランプ政権が各国とのディール(取引)を通じて、中国を国際的なサプライチェーン(供給網)から締め出そうとする動きだ。
ASEANの中で中国との取引額が最大のベトナムは、先に米国との貿易協定に合意。中国製品の迂回(うかい)輸出を防ぐため、ベトナムで製品を積み替える場合は40%の高関税となる内容で、中国は強く反発している。王氏には、同様の動きが各国に広がらないよう会議を利用してくぎを刺す狙いがあったとみられる。
王氏は11日、長らく関係が冷え込んできたカナダのアナンド外相とも会談し、連携を説いた。トランプ政権がカナダに35%の関税適用を通知したことが念頭にあったもようだ。
一方で、注目された米中外相会談は淡々と終了。双方の発表文は短く当たり障りのない内容で、台湾やウクライナ問題、関税を巡るやりとりは盛り込まれなかった。ルビオ氏は会談後、米中首脳の対面について「実現する可能性が高い」と記者団に語っており、通商摩擦を含む懸案の本格的な進展はトップ会談を待つことになりそうだ。
〔写真説明〕中国の王毅共産党政治局員兼外相=10日、クアラルンプール(ロイター時事)