
22日に投開票された東京都議選では、有権者へのアピールに向け、SNSが積極的に活用された。日々の活動や政策を伝えるツールとして効果を実感する声がある一方、どれだけ投票行動に結び付くのか、効果を測りかねた候補も。偽情報の拡散といった問題は都議選でも顕在化しており、7月の参院選に向けた課題は少なくない。
選挙でのSNS活用は、昨年の都知事選や兵庫県知事選で知名度向上や当選に貢献したとして注目された。無党派層の支持を集めるため、SNS戦略を強化する動きはその後の各種選挙でも政党や候補者の間で広がっている。
時事通信の22日の出口調査では、投票先を決める際にSNSの情報を参考にしたと答えたのは35.7%。参考にした人の支持政党では、「支持政党なし」が約3割と最多だった。
都議選では新人を中心にSNSの効果を期待した候補が目立ち、地域政党「都民ファーストの会」から出馬した女性は「SNSの熱に感化されて足を止めてくれる人がいた」と話す。
地域政党「再生の道」から立候補した女性は、ライブ配信を積極的に展開。石丸伸二代表の知名度を背景に切り抜き動画が多数発信され、数万回再生された動画もあった。ただ、「再生」から出馬した男性からは「応援してくれる人が選挙区の有権者かも、私に対する応援かも分からなかった」といった声が聞かれた。
このため、新人でも有権者に直接接する活動を重視した候補も目立った。都民ファから公認され、初当選した中山詩都氏(26)は、自身のユーチューブチャンネルの更新を昨年末に止め、駅前での演説やビラ配りに力を入れた。SNSだけで有権者の投票行動を変えるのは難しいと考えたのが理由だ。「自分自身が有権者と顔なじみになっていくのが大事だと実感した」という。
一方、選挙戦ではSNS上で、出自を巡る候補者へ中傷や公選法違反を指摘する偽情報の拡散などが起きた。政党や候補者がそうした情報を訂正したり反論したりするケースもあったが、現行法では規制が追い付いておらず、参院選でも同様の問題が起こる可能性が高そうだ。
選挙プランナーの松田馨氏は「(選挙戦略として)ビラ配りや演説とSNSは別のフィールドだ。うまく使えば票を伸ばす可能性がある」と指摘。偽情報の拡散などへの対応に関し、「ファクトチェックや情報リテラシー教育がますます重要になる」と指摘した。
〔写真説明〕東京都議選で、候補者の街頭演説をスマートフォンで撮影する聴衆=21日、東京都品川区