デモ鎮圧に軍動員、法逸脱の懸念=トランプ氏の州兵・海兵隊派遣―米

 【ワシントン時事】トランプ米大統領がロサンゼルスのデモ鎮圧のため州兵や海兵隊を動員したことに、連邦法逸脱を指摘する声が上がっている。軍による国内の治安維持活動は原則として禁じられているが、トランプ氏は所定の手続きを迂回(うかい)して派遣を強行し、地元の州・市当局は猛反発。専門家は、大統領権限の拡大を目指すトランプ氏が法の支配を揺るがすと懸念する。
 軍が市民拘束などの法執行活動に従事することは禁じられている。例外は、1807年制定の「反乱法」が発動されるケースだ。文民の対処能力を超える規模の動乱が起きた際に、大統領が軍を動員し、法執行に当たらせることができる。
 だが今回、政権が軍動員に当たって依拠したのは反乱法ではなく、米軍に関連する合衆国法典10編12406条の規定。米国が侵略を受けたり、米政府の権威を脅かす反乱行為が起きたりした場合、あるいはそうした危険がある場合に「大統領が必要な数の連邦軍や州兵を招集できる」と定めている。
 もっとも、ロサンゼルスの抗議活動は侵略や反乱のレベルに達していないとの見方が大半。カリフォルニア州のニューサム知事は「命令は州知事を通じて発せられなければならない」とする同条項の規定に反したとして、トランプ氏を緊急提訴した。
 政権が反乱法を適用していない理由について、ニューヨーク大ブレナン司法センターのエリザベス・ゴイティン氏は「広く認知される同法を乱用すれば、国民の激しい反発を呼ぶため」だと推察。他方、12406条には解釈にあいまいな点が残されているという。政権が法の抜け穴を試し、「最終手段」たる軍を率先して展開することで「個人の自由が脅かされ、専制政治が助長される」と警鐘を鳴らした。 
〔写真説明〕10日、米ロサンゼルス市内の連邦ビルを警備するカリフォルニア州兵と警察官(AFP時事)

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