「こりゃ大修理だ…」博物館を悩ませた現存最古級の貨車 まもなくお披露目! でも残る課題、クリアの見通しは?

明治時代に製造された有蓋貨車の復元が、クラウドファンディングで資金を集めつつ行われました。ゴールデンウィーク期間に貨物鉄道博物館で展示予定ですが、どのような復元作業が行われたのか同館へ聞いてみました。

復元された貨車はどんな車両?

 三重県いなべ市にある貨物鉄道博物館は、クラウドファンディングによって有蓋貨車の復元費用を賄いました。作業はすでに完了し、同館によると2025年5月4日(日)にお披露目するとのことです。

 今回復元された貨車は、1900(明治33)年に関西鉄道四日市工場で製造された「テワ1」と呼ばれるものです。関西鉄道は現在のJR関西本線などを運営していた鉄道事業者で、1907(明治40)年に国有化されています。

 テワ1は1921(大正10)年に茨城県の龍崎鉄道へ譲渡され、1950(昭和25)年頃に廃車された後は、関東鉄道竜ヶ崎線の竜ケ崎客車庫で付属倉庫として使われていました。龍崎鉄道は現在の関東鉄道竜ヶ崎線を開業させた会社で、今回の復元にあたっては関東鉄道の前身である鹿島参宮鉄道時代の姿が再現されました。

 ちなみに、関西鉄道時代は458号、国有化後はテワ1003形1009と名乗っていました。テワ1と名乗っていたのは、龍崎鉄道や鹿島参宮鉄道の時代です。

 テワ1は7t積の鉄製有蓋貨車で、「有蓋」とはトラックのような屋根付きの車両のことを示します。当時は木製の貨車が主流でしたが、鉄製という点や、鋼材の国産化が始まったばかりだった時代ゆえに、海外製の材料が多用されていることも特徴です。

 今回の復元にあたり、筆者(柴田東吾:鉄道趣味ライター)は作業内容などを貨物鉄道博物館に聞いてみました。

目標額達成も… 物価高の影響を受ける

 どの部分を修復したのかについて、貨物鉄道博物館の担当者は「床下です。クラウドファンディングで資金を集めたことで、台枠の補修と塗装ができました」と回答。125年前に製造された珍しい台枠構造の見学も、可能となったといいます。

 修復箇所の詳細は台枠(車両の土台にあたる部分)で、軸箱・軸箱守・担弾機(バネ)類は新たに製作したそう。苦労した点については、次のように話しました。

「実車の製作図面がないため、当時の同じような車両などの図面から想定して部材を設計しました。また、想像以上に台枠が劣化していたので、部材補修を行っています」

 復元にあたっては、「123年前に地元四日市で製造された国内最古級の貨車を現役時の姿に!」というテーマで、クラウドファンディングが行われました。先述した通り、倉庫として利用されていた時代が長かったことで下回りが失われていたため、クラウドファンディングでは車輪をはじめそれを支える部品などの復元を行い、線路の上に載せることを目指しています。

 目標額は300万円でしたが、最終的には約458万円が集まりました。しかし、物価高の影響を受けたことで費用がクラウドファンディングの支援額を大幅に上回ってしまい、現在は100万円以上の赤字になっているそうです。

 なお、今回は連結器やブレーキ装置の復元は行われていません。これらの復元には、設計費や鋼材費、制作費など合わせて最低でも100~200万円は必要で、貨物鉄道博物館は引き続き支援を呼びかけています。

 同館ではテワ1のほかにも復元を予定している貨車があり、旧ライジングサン石油タンク車のタ600が次回の候補とされています。テワ1と同じく、タ600も下回りの復元を目標としていますが、これには少なくとも600万円はかかると見込んでいます。

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