
【バンコク時事】ミャンマー中部を震源とする大地震は、28日で発生から1カ月を迎えた。甚大な被害が出た中部マンダレー地域では、地震前から続く国軍と抵抗勢力の内戦から逃れた市民も被災した。「これからどうすればいいのか」。軍事政権からの経済的な支援がいまだに届かない中、被災者らは現地入りした時事通信の通信員に募る不安を吐露した。
2021年のクーデターで実権を握った国軍によると、死者は3700人以上、負傷者は5100人以上確認され、約6万5000棟の家屋が損壊した。
マンダレー地域の寺院では地震前から、国軍と抵抗勢力の戦闘が激化した北部カチン州出身の避難民が暮らす。昨年12月以来孫を含む9人家族で生活していた女性キンレイさん(75)は、地震で倒壊した建物に巻き込まれて夫(80)を亡くした。「戦闘でカチン州の自宅は焼けたと聞いた。すぐに村に戻りたいができない。ここでは農園で働いていたが、今は仕事がない」と疲れた表情で語った。
別の女性ミャミャウィンさん(54)は「紛争で故郷から逃れたら地震に直面し、始めたばかりの屋台での食料品販売も食器が割れてできなくなった。本当に不運だ」と訴えた。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、紛争からの避難民約210万人が地震で影響を受けたと報告した。
被災地では、経済的な支援を訴える人が多い。マンダレー地域の村では地震で土砂崩れが発生し、30棟の家屋が被害を受けた。住民の女性ママレイさん(66)は「自宅を再び建てたいが、地価が高騰して買えない。将来が不安だが、軍事政権からの援助はない」と語った。
マンダレー同様に大きな被害が出た北部ザガイン地域の仮設避難所にいた女性のキンニンユさん(64)は「倒壊した家を片付ける資金がなく、今後どうしたらいいか分からない。息子は車のディーラーだったが、いまは誰も車を買わないので仕事ができない」と途方に暮れた。
被災地で活動する日本赤十字社医療センターの看護師、苫米地則子さんはオンラインでの取材に対し、「今回のミャンマーの地震は、紛争からの避難生活に震災が重なったという特徴がある。他の災害でも時間が経過すると国際的に注目度が下がる傾向があるので、関心を持ち続けて必要な支援を届けることが重要だ」と指摘した。
〔写真説明〕ミャンマー地震で大破した家屋=25日、中部マンダレー地域
〔写真説明〕ミャンマー地震で、国軍と抵抗勢力の内戦からの避難先で被災したキンレイさん(右)=26日、中部マンダレー地域
〔写真説明〕支援物資を受け取るミャンマー地震の被災者ら=26日、北部ザガイン地域