「世界初の独自開発超音速ジェット機」に施された“珍外装”、どんなもの? 実用旅客機ではいち早く「トレンド」に

超音速旅客機「オーバーチュア」の実用化を目指すアメリカのブームの実験機、「XB-1」が、新しい素材を機体に着けて飛んでいます。どのような効果があるのでしょうか。

効果はだいぶ前から知られてはいたが…

 アメリカのスタートアップ企業「ブーム」が、超音速旅客機「オーバーチュア」の実現へ取り組んでいます。これに先駆け「世界初の独自開発超音速ジェット機(the world’s first independently developed supersonic jet)」の名の下飛ばしたテスト機「XB-1」は、実験飛行の後半で新しい素材を機体に着けて臨みました。それは「リブレット加工」と言う、俗に”サメ肌”加工と呼ばれるもので、旅客機など亜音速機で既に実験が続けられています。これをXB-1も装着したのは、どういった理由からでしょうか。

 サメの肌は泳ぐ際に、水の抵抗を減らすことが知られています。これと同じようにリブレット加工は、飛行中の空気抵抗を減らそうと細かい溝を掘ったフィルムを張ったり、塗料で溝を着けたりします。これにより、機体の表面を流れる空気の渦を制御し抵抗を減らす効果が期待されているというわけです。

 この効果自体は40年以上前から知られていました。1970年代にNASAで研究が行われましたが、近年は地球環境への配慮から燃費の削減による二酸化炭素(CO2)の排出抑制が大きく求められ、リブレット加工にも注目が集まりました。

 日本でも、2022年7月からJAL(日本航空)が機体の腹部に塗装で、ANA(全日空)が2024年9月から貨物定期便にフィルムを張るリブレット加工をそれぞれ施し、各社で実際のフライトを交えてのテストを行っています。

 JALによると、機体全面にくまなくリブレット加工を施した場合、約2%の燃費改善効果が期待できるとのことで、「羽田~ロンドン線なら片道あたり7トン削減ができる」と、その効果についてコメントしています。

なぜ民間航空で「超音速サメ肌外装機」はいなかった?

 今回、XB-1が試験を行ったのは、オーストラリアの企業が開発したフィルムでした。2024年秋以降、「世界初の独自開発超音速ジェット機」であるXB-1の機体後部下面の、一般の塗装が施されたか所と、塗装がされずチタン合金の部分それぞれに、面積が0.5平方mのリブレット加工が施されたフィルムが張られたのです。

 リブレット加工は旅客機や軍用輸送機で試験は続いていますが、マッハを超えて飛ぶ民間機はほぼないため、超音速飛行での試験は行われていませんでした。このため、「かつてないスピードを出しながら環境に負担をかけない」ことを設計の主眼に挙げているブーム社の試験機、XB-1でのテストにつながったのです。

 XB-1は8回目の実験飛行から、リブレット加工をしたフィルムを張って臨みました。2025年1月と2月の第12回と第13回の実験飛行ではそれぞれマッハ1.122、1.18を出し、着陸後後、機体後部に張られたフィルムの状態を確認しましたが、目に見える劣化や機体表面からフィルムが浮き上がったなどの変化は確認されなかったということです。

 実際の超音速商業飛行は長時間、音速を超えて飛ぶため、リブレット加工にどれほど耐久性があるかは、より詳細で時間をかけた実験が必要です。それよりも日常的に飛ぶ旅客機の方で、機体全面にリブレット加工を施す際の費用や耐久性に加えて、フィルム加工と塗装のどちらが優れているかを確認していかなければならないでしょう。

 とはいえ、超音速商業飛行への期待は「コンコルド」の退役以降も根強くあります、今後、ブームがどのような実験を行うか、業界内で関心が寄せられています。

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