青森‐函館だけじゃない 本州最北端へ向かう津軽海峡フェリーに乗ってみた レア便だけど由緒あり!

津軽海峡フェリーは、青森~函館航路で知られる船会社ですが、実は1日2往復のみ函館~大間航路も運航しています。100年近い歴史を持つ大間航路に、土曜日、函館発で乗船しました。

100年近い歴史を持つ大間航路

 本州最北端・下北半島の先端に位置する青森県の大間と、北海道の函館を結ぶ大間航路。現在は津軽海峡フェリーにより運航されていますが、実は100年近い歴史を持ちます。同区間に定期航路が開設されたのは1929(昭和4)年まで遡るのです。

 太平洋戦争などもあっていったんは廃止されたものの、1951(昭和26)年に道南海運(津軽海峡フェリーの前々身)が函館~大間~佐井間の定期航路について国から認可を得ます。なお、実現まで時間を擁し、その間の1962(昭和37)年、道南海運の社長がヨーロッパを視察して、ドーバー海峡のカーフェリーをヒントに、日本初の外洋カーフェリー「大函丸」(初代)を就航させました。

 当初は大間港の設備制限もあり、「大函丸」は総トン数451t、大型トラック8台または大型バス6台の航送能力を備え、旅客定員256名という能力でした。大間~函館間には1時間40分を要しました。

 大間航路の需要は増え続け、1971(昭和46)年には深夜便を含む1日15往復が運航されました。この時期には5隻の船舶が投入されて、国道279号の海上道路にも指定されたほどです。

 その後、航路利用客は減少を始め、2010年代には存続が危ぶまれる事態となりました。青森県と大間町、津軽海峡フェリーは協議を行い、大間町が新造船を建造し、運航は津軽海峡フェリーが担う、赤字が出た場合でも大間町が補助し、青森県が新造船の建造費の一部や大間港の改修費用を負担するということで合意し現在に至ります。

初代を襲名した2代 速力もアップ!

「大函丸」(2代目)は、初代の船名を受け継いで2013(平成25)年に就役しました。総トン数1912tは初代の4倍。8tトラック21台および乗用車3台、または乗用車60台という搭載能力は実に3倍です。

 航海速力も13ノット(約24km/h)から18ノット(約33.3km/h)へ増えたため、大間~函館間の所要は1時間30分に短縮されました。

 2025年3月の土曜日、筆者(安藤昌季:乗りものライター)は函館港フェリーターミナルを訪れました。五稜郭駅から向かおうとしたのですが、駅と五稜郭バス停はかなり離れており、徒歩乗船する場合はJR函館駅から出ているシャトルバスに乗る方がよさそうです。

 午前9時30分発の大間行き「大函丸」に徒歩乗船するのは30人ほどでした。この日は1番のりばに「大函丸」が到着し、船尾が開くとクルマが吐き出されていきました。徒歩客が乗船できるのは9時15分からで、筆者が船尾から乗船すると、先に乗りこんだクルマ利用の乗客がすでに寛いでいました。

 エスカレーターを上がると、右手と正面奥にフリースペースが見えます。近づくとマグロの形をした巨大テーブルがあり、マグロで有名な大間に行く船を感じさせます。そこからはバリアフリールームの椅子席が見えますが、当日は車いす利用客がいなかったからか、閉鎖されていました。

「ファーストシート」は昔の新幹線グリーン車のよう

 一般の椅子席は2クラスあり、ひとつは特急普通車のような「カジュアルシート」と、もうひとつは昔の新幹線グリーン車のような「ファーストシート」です。筆者は「ファーストシート」を予約。100系新幹線や300系新幹線を思わせる重厚な座り心地の座席で、ひじ掛け内部にはインアームテーブル、ほかにも引き出し式のレッグレストや毛布も備わっていました。

 船体中央部には売店と、レセプションと呼ばれるロビーがあり、その周辺には自動販売機が置かれていました。

 自動ドアで区切られた船体後部は、「スタンダード」と呼ばれるカーペット席です。旅客が思い思いにゴロゴロしつつ、テレビを見たりしていました。ちなみに階段を上がった場所にも「スタンダード」が設置されています。

 先述の通り航行時間は1時間半ほどですが、船内はなかなか充実しています。階段を上れば展望デッキへも出られますが、座席が快適だからか、休息を取っている人が大半でした。「ファーストシート」には8人、そのほかのシートを合わせると乗船客は50人ほど。「大函丸」の定員は478名ですから、乗船率は約10%です。

 小さい船体ながら速度は18ノットを出しますが、揺れは小さくエンジン音も静かです。大間港フェリーターミナルには定刻の11時に着きました。

 大間ではマグロや海鮮料理のほか、本州最北端であることもPRされていました。路線バスに乗り継げばJR大湊線の下北駅を目指すこともできます。今や最盛期の7分の1以下となってしまった「大函丸」の運航便数ですが、津軽海峡を渡るルートのひとつとして、100年の歴史も見えてきました。

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