自衛隊の偉い人も興味いっぱい!「最先端の無人戦闘機」オーストラリアで開発中 どんな運用を想定する?

航空自衛隊も興味を示すボーイング・オーストラリアのMQ-28「ゴーストバット」。最も実用化に近い無人戦闘機と言われる同機について、現地のエアショーで現役将兵らにハナシを聞きました。

有人機と連携する無人機を目指して

 2025年3月下旬、オーストラリア南東部にあるアバロン空港で開催された「アバロン・オーストラリア・インターナショナル・エアショー」に、オーストラリア空軍は開発中の多用途無人機MQ-28「ゴーストバット」を展示しました。

 この機体、外見はステルス戦闘機のような突起の少ない滑らかなフォルムをしており、照射されたレーダー波を別方向に反らすために、尾翼も機体側面に合わせて傾斜して取り付けられています。全長11m、全幅7.3mと戦闘機としては小ぶりなサイズなのは、パイロットが乗るべきコックピットが存在しないことが一因です。とはいえ、同機の1番の特徴は、単なる無人機ではなくパイロットが操縦する有人機と連携して戦うことを目的にしている点でしょう。

 MQ-28「ゴーストバット」に限らず、近年は世界各国で無人戦闘機の開発が盛んに行われています。ただし、その中で特に重要な要素となっているのが、有人戦闘機との連携能力です。これは「MUM-T」(有人機と無人機のチーミング)や「CCA」(協調戦闘機)と呼ばれており、1機の戦闘機で複数の無人機を率い、戦闘に投入することでより効率的な戦いができるだけでなく、危険な状況においても無人機を活用することで撃墜時の人的被害を回避できるという狙いがあります。

 これら各国で開発が進む無人戦闘機の中でもっとも実用化に近いといえるのが、MQ-28「ゴーストバット」です。2021年の初飛行からすでに100回以上の試験飛行をこなしているそうで、今後はオーストラリア空軍が保有するF-35「ライトニングII」戦闘機などの有人機と連携した飛行も予定されています。

 なお、今回展示されたMQ-28はオーストラリア空軍での実任務を想定したカラーリングとなっており、そこも本機の試験が着実に進んでいることの現れだといえるでしょう。

 展示機の周りには、この機体の運用試験を担っているオーストラリア空軍将兵も立っていたため、分遣隊指揮官の中佐や隊員から具体的なハナシを聞くことができました。

何ができる? 現時点での武装は

 MQ-28は戦闘機のような形をしていますが、現時点ではミサイルなどの兵器を搭載するウエポンベイや、機外に搭載するパイロンは搭載されていません。この機体が戦闘で使用可能な装備は機首部分に搭載するセンサーしかありませんが、そもそもの任務は戦場において有人機の目と耳の役割となるISR(情報・監視・偵察)なので、ウエポンベイやパイロンなどがなくても問題ないようです。

 機首部分は、任務に応じて装備を交換できるモジュラー式となっており、説明によれば現時点で搭載を想定しているのは、赤外線探索追尾装置とマルチファンクションRFセンサーとのことでした。

 ただ、前出の中佐いわく、ミサイルをはじめとした兵器の搭載については「その能力はある」そうで、具体的な時期などは明言しなかったものの、今後対応する可能性はあると述べていました。また本イベント中に開発元のボーイング・オーストラリアの関係者が海外メディアの取材を受けていましたが、そこで今年度中に本機から空対空ミサイルの発射試験を行う予定だとコメントしています。

 MQ-28は2000海里(約3700km)以上の航続距離と、高度4万フィート(約1万2000m)までの上昇性能を持っています。最高速度は非公開ですが「有人戦闘機のスピードに対応できる」だけの機動性があるそうで、オーストラリア空軍が運用しているF-35A「ライトニングII」やF/A-18F「スーパーホーネット」、EA-18G「グラウラー」といった戦闘機・電子戦機との連携を想定しています。

 また、E-7A「ウェッジテイル」早期警戒管制機やP-8A「ポセイドン」哨戒機との共同任務も構想があるようで、このような使い方の場合、センサーとしての役割だけでなく、武装化できれば護衛や攻撃任務に用いられるかもしれません。

大量導入に備え、新たなパイロット育成方法も

 MQ-28「ゴーストバット」はAIによる自律制御が可能ですが、有人機との連携が前提のためその運用には人間が介入する必要があります。これは「オペレーター・イン・ザ・ループ」と呼ばれ、機体の離発着は地上のオペレーターが担当し、任務中はそれを有人機のパイロットが引き継ぐそうです。

 また、地上オペレーターは任務中に操縦ではなく、MQ-28に搭載されるセンサー機器を操作して別のタスクで任務に協力することも可能と、前出のオーストラリア空軍中佐は説明していました。

 この機体が制式採用された場合、その数は有人機よりも多くなるのは確実で、中佐いわく「これは理想ですが、我々は数百ものMQ-28を運用したいと考えています」とのこと。しかし、そこで問題になってくるのがオペレーターの育成だとか。「通常のパイロットの育成には費用がかかるので、私たちはこの無人機でそれだけの費用を払うことはできません」と述べていました。

 そこで検討されているのが有人機のパイロットに操縦させるのではなく、無人機オペレーターとも言える新しい役職の人材を採用することだといいます。MQ-28は航空機ですが、その操縦は有人機とは異なり、モニターを通じてゲームのように操作をするのではなく、数値や座標を入力するプログラムに近いものだといいます。

 つまり、実機の操縦経験は必ずしも要求されるわけではなく、より簡易的な訓練でも操縦技術を習得することができる模様です。

「現時点ではパイロットとシステムオペレーターが機体を飛ばしていますが、私たちはこの機体を操縦するためだけの隊員を採用することを検討したいと考えています」(前出の中佐)。

 無人機といえば未来的なイメージがありますが、軍事の分野ではすでに当たり前の存在であり、運用の長い歴史があります。しかし、有人機と連携をするMQ-28はこれまでにない新しいカテゴリーの機体であり、これを実際に使える兵器にまで完成させるには機体そのものの開発だけでなく、運用方法や部隊の構築、人材育成なども同時に考えていく必要があるようです。

 MQ-28は、日本の航空自衛隊も興味があるようで、「アバロン・オーストラリア・インターナショナル・エアショー」では、航空自衛隊の将官が、展示機を熱心に見学し、ボーイング・オーストラリアの関係者から説明を受けていました。

 日本も開発に参加している次世代戦闘機「GCAP」では、無人機との連携能力が含まれていることから、本機の存在を注視している模様です。

externallink関連リンク

【肩に光る桜章が】「ゴーストバット」を見学する自衛隊の偉い人です(写真)SF世界の到来は間もなく? 米空軍が「無人戦闘機」プロジェクトを本格化へ 従来ドローンとは段違いの差です「最高にカッコイイ!」空自F-4「ファントムII」飛ぶ姿を動画で公開“往年の名機”再び空へ
externallinkコメント一覧

コメントを残す

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)