「世界二大旅客機メーカーのビジネス機」なぜ売れ行き鈍いのに販売続く?年0機発送でも“カタログ”落ちしないワケ

ボーイングとエアバスはそれぞれ自社の既存の旅客機を派生させ、ビジネスジェット化したモデルを長年に渡り販売しています。売れ行きは好調でないにもかかわらずです。なぜなのでしょうか。

四半世紀前から「あんま売れてないのにいる…」

 世界2大旅客機メーカーであるボーイングとエアバスは実は、それぞれ自社の既存の旅客機を派生させ、企業や個人向けの機体である、ビジネスジェットも製造しています。この、ビジネスジェット化した機体ですが、売れ行きとしては好調とは程遠いラインにいるにも関わらず、カタログからは残り続けています。両社にとって、これはどういう意味を持つのでしょう。

 ボーイングとエアバスが、旅客機派生型のビジネスジェットを登場させたのは四半世紀以上前でした。

 旅客機と異なるVIP用の内装で機内をあつらえた機体は、それまでも王室や政府用の専用機がありましたが、旅客機を文字通りビジネスジェットに仕立てて継続的にセールス・販売するようになったのは、この四半世紀ほど前から始まったと言えるでしょう。

 まず、ボーイングが1998年に単通路機「737-700」に強化された主翼や降着装置を加えて派生させた「BBJ(ボーイング・ビジネスジェット)」を初飛行。それに対抗するかのようにエアバスも単通路機「A319」をACJ(エアバス・コーポレート・ジェット。A319CJ)の名で販売し始めました。

 両社の売りは、ガルフストリームやボンバルディアといったビジネスジェット専用メーカーがつくる最も大きい機種よりも、さらに機内の容量があり、内装もゆったりとしたものに出来るということにありました。

 さらにはボーイングでいえば777や787、エアバスでいえばA330やA350といった複通路の中型機や大型旅客機もそれぞれBBJ、ACJ仕様に出来るため、政府や王室などの公用機として売り込むこともできます。

 とはいえ、米国の統計から1年間ごとのBBJとACJの出荷機数を見ると、最も売れたのはBBJの登場した年である1999年の29機でした。それ以降は、まったく発送がない、もしくは1機のみの年もあったり、10機以上が出荷された年もあったりとバラついています。2024年までの平均発送機数はボーイングもエアバスも6~7機です。これは仮に旅客機市場であれば、かなり低調な売れ行きです。

 なお、先述のビジネスジェット専用メーカーは、各年の発送機数が100機以上となっていることが多く、ボーイング・エアバスは大きな差をつけられており、2社にとってビジネスジェットは“稼ぎ頭”でないのは明らかです。

売れ行きイマイチなのに「旅客機ベースのビジネス機」が並ぶ理由

 とはいえ、BBJもACJもボーイングとエアバスの公式サイトに現在も掲載され、カタログ落ちはしていません。

 それどころか2015年からはボーイングが大型機「777-300ER」ベースのBBJを出荷。さらに777の派生型で、同社が開発を進めている777Xシリーズの標準型「777-9」でもBBJ型をラインナップさせるなど、広くレパートリーをかけてセールスしていることが伺えます。対するエアバスもA350-900のベースの「ACJ350」の出荷に力を入れている模様です。

 旅客機とビジネスジェットは、大人数を定期便として運ぶ機体と、少ない人数を「特別な」目的のために飛ぶ、というように目的は大きく異なります。その少人数は1人か数人、或いは20人程度と多岐に渡り、ビジネスジェット専用メーカーもそれらに合わせて大きさの異なる機種を販売しています。そのため、旅客機メーカーにとってビジネスジェット市場はそもそもアウェイと言ってよいかもしれません。

 とはいえ、政府系機関を中心に、こうした大型ビジネスジェットは実際に受注を獲得していますし、超大富豪の個人ユースはもとより、企業のスタッフ何十人を一気に乗せる際の“社用機”としても活用された例もあります。

 さらに、ビジネスジェット専用メーカーがイチからBBJ・ACJクラスの機体を生み出すのは、もし技術的に可能であったとしても、まったくの新型機ゆえ、実用化までに10年以上の年月が必要となるでしょう。そのため、そうしたメーカーも中大型旅客機クラスのビジネスジェットは製造せず、ボーイング・エアバスと市場を“棲み分ける”のが理にかなっているというわけです。

 そうした意味でボーイングとエアバスは、受注自体は少なくてもビジネスジェット開発を継続する可能性は高いといえるでしょう。2社が「世界二大旅客機メーカー」としてライバル関係にあるということも、この可能性をより色濃くしています。

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