日本も愛用! F-4「ファントムII」が名機になった最大の理由とは ポイントは「人力」!?

航空自衛隊も運用したF-4「ファントムII」は累計約5200機も生産された傑作ジェット戦闘機です。ただ、ここまで世界中で採用されるほどのベストセラー機になったのには、構造上の大きな理由があったとか。一体どこなのでしょうか。

航空自衛隊でも半世紀運用された傑作機

 軍用機の分野において、F-4「ファントムII」ほど長く、そして様々な国で艦載機から陸上機まで多用された戦闘機は他にないと言えるのではないでしょうか。

 その特徴的な設計、強力なエンジン、そして何よりも、2人乗りという点が、この機体を傑作たらしめたと筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)は考えています。

 航空自衛隊においても、独自仕様であるF-4EJ「ファントムII」を導入・運用していましたが、その期間は半世紀にもわたっています。その長年にわたる運用と、北は北海道から南は沖縄まで全国に配備されたことも相まって、独特な存在感を示したといえるでしょう。

 現代の戦闘機は、高度なコンピューター技術により、パイロット1人で操縦からレーダー操作、兵器管制まで、多岐にわたる任務をこなすことが可能です。しかし1950年代から60年代にかけて、コンピューター技術はまだ黎明期にあり、特にレーダーの解析は非常に複雑な作業でした。

 当時のレーダーは、現代のような高性能なものではなく、雲やノイズといった不要な信号も多く検出してしまいました。そのため、パイロット1人でこれらの情報を処理し、敵機だけを的確に識別することは極めて困難だったのです。ここに、F-4「ファントムII」が2人乗りを採用した理由があります。

 そもそもF-4が生まれた経緯は、アメリカ海軍による全天候戦闘機の開発計画が端緒です。これを受け、マクドネル・エアクラフト社(現ボーイング)が試作機を開発しますが、この計画においてライバル機であったのがチャンス・ヴォート社のF8U-3「クルセイダーIII」です。

 F8U-3は単座の戦闘機でした。その優れた飛行性能で注目を集めたものの、レーダー操作をパイロット1人で行う必要がありました。一方、F-4は、レーダー操作を専門とする後席搭乗員を用意し2人乗りとしたことで、レーダーの有効活用を可能にした点が、F8U-3とは異なっていました。

 後席搭乗員はレーダー画面を監視しながら、敵機の位置、速度、高度などの情報を解析し、パイロットに伝達します。これにより、パイロットは操縦に集中することができ、より効率的な戦闘が可能でした。そして、この複座という点が、F8U-3に勝利しF-4がアメリカ海軍に採用された大きな理由の1つだったのです。

海軍のあとで空軍でも採用 それが決定打に

 海軍での成功を受けて、アメリカ空軍もF-4を採用しました。空軍はその高い汎用性と搭載能力に着目し、空中戦だけではなく戦闘爆撃機、偵察機、敵防空網の制圧機など、多岐にわたる任務にF-4を投入、様々な派生型を生み出します。空軍での成功も「もう1人乗っている」という点が無視できない要素になったと言えるでしょう。

 F-4はベトナム戦争をはじめとする数々の戦場で活躍し、その高い性能を実証します。特に、複座によるレーダーの有効活用は、敵機の早期発見と迎撃に大きく貢献し、「視程距離外(BVR)戦闘能力」を持ったF-4は、ミグ(MiG)をはじめとしたソ連(現ロシア)製の戦闘機を一方的に攻撃することができたのです。

 こうしてF-4が戦闘機として優れた性能を持っていることが判明すると、世界中の国々から注目を集めるようになります。結果、自由主義陣営、いわゆる西側諸国の多くがF-4を採用、各型合計で約5200機も生産されています。なお、日本も前述したようにF-4EJを導入し、航空自衛隊の主力戦闘機として長年にわたり防空用途で運用しました。

 このように、世界的に成功したF-4ですが、その大きな理由のひとつにはやはり「複座であること」は極めて重要な要素として挙げることができるでしょう。乗員が2人であったからこそ、迎撃能力を最大限に発揮できたのであり、F-4を全天候戦闘機として機能させる大きな要因になったのです。

 また、そのような複座の構造と余裕のある大柄な機体だったからこそ、その後のアップデート化にも対応でき、結果として西側諸国の空を長きにわたり守る存在にまで昇華させました。

 現代では、電子技術の飛躍的進歩により、F-35のような単座機でも高度なセンサーとコンピューターの支援を受ければBVR戦闘や多用途戦闘機としてのミッションを遂行できます。

 しかし、かつてのF-4は、技術の限界を克服するために「人間の力」に頼る選択をし、それが成功へと繋がりました。複座だからこそ成し得た成功。それが、F-4「ファントムII」の偉大さを物語っていると筆者は考えています。

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