「クルマの傷消しクリーム」ってマジで使えるの? YouTube広告などでは“魔法のよう” 専門業者に聞いてみた

YouTubeの動画広告やネット広告でも魔法のような施工例が宣伝されることがあるクルマの「キズ消しクリーム」。実際はどこまで有効なのでしょうか。専門業者に聞きました。

ホントかよ!? 愛車の傷が一瞬でキレイに?

 YouTubeの動画広告やネット広告で、ボコボコに凹んだクルマのボディがクリームを塗るだけで一瞬で直るという魔法のような「外国製の傷消しクリーム」の宣伝で見たことがあります。

「そんなことあるんかい!」と、マユツバで観ていましたが、ふとホームセンターに行ってみると、複数のメーカーから同様の「クルマの傷消しクリーム」が売られていることを知りました。

 ちょうど筆者、愛車がボコボコに傷ついていたので、試しに「クルマの傷消しクリーム」を買ってみたのですが、よく見ると「スリキズ・キズ消しコンパウンド」。筆者のようなボコボコの傷はダメで、あくまでもスリキズ対応のモノでした。

 うーん、やはりあのYouTubeの動画広告で観たボコボコが一瞬で直るクリームを買うべきなのでしょうか。そう悩んだ挙句、「やはりプロの力を借りるべきだ」と都内の板金塗装業者に入庫。バッチリ傷を直してもらいました。

 合わせて板金塗装業者の代表に、例の「傷消しクリーム」の実態について聞いてみると、「実は最近、クリームでは直らなかった」として、改めて修理に持ってくる人が後を絶たないのだと言います。やはりYouTubeの動画広告などの影響なのでしょうか。

市販「傷消しクリーム」の“限界”はある?

 業者代表は「傷消しクリーム」を全否定するわけではなく、あくまでも「傷の度合い」によっては使えると言います。

「クルマのボディ表面にはトップコートというクリアな膜が覆われているのですが、それを引っ掻いてしまった程度の『スリキズ』であれば、使えると思います」

 要はボディ本来の『色』にまで傷が入り込んでいない場合に限って、引っ掻き傷はある程度は消せるということなのでそうです。

 一方、その傷がトップコートを越えて、ボディ本来の色にまで入り込んでいたり、ボコっと凹んだりしているところをクリームでシュッっと拭くだけで全部直る……というのは「物理的にありえない」と話します。

「こういったことを知らぬまま『傷消しクリーム』を塗って、ああでもないこうでもないとやって傷を広がらせたりして『もう手に負えない』となり、うちに修理に持ってくるお客さんが増えたんですよ。でも、そうなると結果的に高くついてしまうことになるんですよね」(板金塗装業者代表)

意外と厄介な「隣のクルマにぶつけられた」ドアパンチ

 筆者が自分のクルマの修理依頼をした理由は、いわゆるドアパンチ傷が複数箇所に増えてしまったこともありました。

 駐車場などで隣になったクルマのドアなどをぶつけられたパンチ傷で、すごくモヤモヤしながらも、ぶつけたクルマを見つけることはもうできず、泣き寝入りするしかない状況もありました。こんなドアパンチ傷こそ、簡単に『傷消しクリーム』などで直せると良いのですが、板金塗装業者の代表は話します。

「ドアパンチ傷って、なんとなく『丸い傷』をイメージされる方が多いと思うんですけど、実は隣のクルマのドアがぶつかってついた傷ですから、厳密には『縦型の傷』なんです。結構深く入っていて、ボディ本来の色も掘っていることが大半なので、やはり『傷消しクリーム』で直せる範囲ではないと思います」(板金塗装業者代表)

 ドアパンチ傷の直し方は、その傷にまずパテを入れて、なだらかにして塗装するのが一つの方法。パテでも追い付かないほどの深い傷の場合は、その部分に機械を引っ掛けていったん傷周辺の鉄を引っ張り出し、そこから綺麗になだらかにして塗装するのもまた一つの方法だそうです。いずれにしても「傷消しクリーム」を塗っただけで綺麗になる、ということはありえないといいます。

 また、その塗装に関しても日本車の場合、いくつもの色を組み合わせた塗料を使っていることが多く、この塗料作りも厄介だとか。

「外車はそうでもないんですけど、日本車のボディは何色もの色を混ぜ合わせて、そのカラーリングにしていることが大半です。どんなボディカラーにも対応しなければいけないので、その都度インクを混ぜ合わせて、確実に正しい色を塗装して納めています」(板金塗装業者代表)

そもそも傷消しは「どこへ持って行けばいいのか」

 やはりクルマの傷直しはそう簡単にできるものではないことが分かりましたが、こういった傷や凹み修理を依頼する場合、一般的には「カーコンビニ倶楽部」やガソリンスタンド、中古車販売業者などのサービスを理由する人が多いように感じます。これは果たして正しい選択なのでしょうか。

 代表は「他社さんがどのようにして傷や凹みの修理をしているか、それと費用設定をどのようにしているかは僕にもわからない」としつつも、「どこかの業者が修理を受け付けても、実際に作業をするのはその委託先である僕らのような板金塗装の専門業者です。結果的に、専門業者へ直接依頼するよりも若干割高になるのでしょう」と話します。

「その辺をどう考えるかは個人ごと違うとは思いますが、特にマニアックなクルマ、専門的なクルマの場合は、その車種に得意な板金塗装業者を探して直接オーダーするのが良いようには思います」

 ここまでの通り、「傷直し」と言っても完璧にやろうとすれば、市販の補修商品では到底追い付かない板金塗装の奥深い世界があるようです。

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