団体「カシオペア」消滅か? 北海道新幹線の開通から約10年 人気列車の将来がヤバい理由

かつては寝台特急「カシオペア」として運行され、現在は団体列車「カシオペア紀行」で使われるE26系客車。JR東日本が機関車廃車を始めたこともあり、注目が集まります。運行開始25周年を迎えたE26系について、振り返ります。

「ニュー北斗星」として計画

 2025年2月現在、クルーズトレイン「カシオペア紀行」として運行されるE26系は、1999年(平成11)年に登場した寝台特急「カシオペア」用の客車です。寝台特急用の車両としては最後のもので、今後「サンライズ瀬戸・出雲」用に新車が投入されない場合は「最後の寝台特急用車両」となります。

「カシオペア」は、1988(昭和63)年に登場した上野~札幌間の寝台特急「北斗星」の好評を受けてのことでした。「北斗星」は、予約制コース料理を提供する食堂車や、シャワー設備を持つ豪華なA個室寝台「ロイヤル」を備えており、既存の寝台列車と一線を画す存在であったため、一躍プラチナチケットの寝台特急となりました。

 1999年時点ではややブームが落ち着いていたものの、「北斗星」は1日3往復を運行する人気列車でした。とはいえ「北斗星」は24系客車の改造だったことから「揺れる」「個室が少ない」といった不満も寄せられていました。

 また「ロイヤル」は1人用個室だったものの、エキストラベッドを使っての2人利用も多かったことから、アンケート結果も参考にしたJR東日本は、2人用個室を中心とした豪華寝台列車を開発することとしたのです。

「ニュー北斗星用車両」として計画されたE26系ですが、定員や床面積を増加させるため、E217系電車のグリーン車を参考に、上下2階建て構造の個室寝台車となりました。全てA寝台のため、個室内で直立できる、個室内にトイレと洗面所がある、基本的にハシゴでの2段寝台にしないことが追求されています。開発時に参考とされたのは1989(平成元)年製の試作寝台車「夢空間」ですが、同車では製作コストが高騰したことも考慮され、E26系は建築技術を応用してのコストダウンが図られました。

定員を増やし、乗り心地も改善

 標準的な2人用A個室「カシオペアツイン」は、定員20(補助ベッド使用で21)名で計画されています。JR北海道が「北斗星」用に開発した1人用B個室寝台「ソロ」車両では定員17名。「サンライズ瀬戸・出雲」の「シングル」は定員23(補助ベッドで26)名なので、個室内にトイレを入れて定員20名という計画は、パズルのような空間活用が求められました。

 モックアップで空間を確認しつつ、個室への階段を螺旋階段かつ共用としてスペースを確保したり、肘掛けを移動式にして、空いた場所に収納したりするなど、工夫が重ねられました。例えば2階をリビング、1階を寝室としたメゾネット型の最上位個室「カシオペアスイート」では、寝台の一部を通路の下に入れ込み、寝台幅85cmを確保しています。

 また、それまでの24系とは違い、発電用エンジンを搭載した電源車を展望ラウンジカーとするため、防音・防振・防火対策を徹底しています。「北斗星」で問題となった乗り心地も、電車と同様の電気指令式ブレーキを採用してブレーキの利きを均一化したり、連結器の緩衝器をしなやかな素材としたりするなど、振動を大幅に軽減しました。筆者(安藤昌季:乗りものライター)は何度か「カシオペア」に乗っていますが、台車上に位置する「カシオペアスイート 展望室」ですら、静かで滑るような乗り心地で、感動しました。実感としては「サンライズ瀬戸・出雲」より静かで乗り心地がよく、クルーズトレイン「ななつ星 in 九州」には劣るといったところでしょうか。

牽引できる機関車がなくなっている

 E26系は7種類の個室寝台と、食堂車、ラウンジカーを備えた12両編成です。7種類とは、
 
・カシオペアスイート(展望室付き/メゾネット)
・カシオペアデラックス
・カシオペアデラックス(階上/階下/平屋)
・カシオペアコンパート
 
で、車いす対応の「カシオペアコンパート」は、補助ベッドを展開すると3人利用もできます。

 E26系は1編成のみのため、週3回運行という特殊な運行形態でした。JR北海道も導入を検討したようですが、実現せずに終わっています。「北斗星」同様、「カシオペア」もプラチナチケットとなる人気でしたが、冬季の札幌発は空席も見られ、1人用での販売も行われました。その後、北海道新幹線が開業したことにより、2016(平成28)年以降は団体旅行商品の「カシオペアクルーズ」「カシオペア紀行」として現在まで運行されています。

「カシオペア紀行」は、基本的にはJR東日本管内のみでの運行です。客単価も寝台特急時代と比べ数倍のため、安定した収益を得られる黒字の「乗って楽しい列車」として、長く継続すると考えられていました。

 ただ、「カシオペア紀行」の牽引にも使われていたEF64形などの機関車が2024年より引退をはじめており、このままいくと機関車全廃も考えられる状況です。JR東日本が導入した事業用車両GV-E197系気動車やE493系電車は、客車の牽引能力を持つものの低出力のため、重いE26系を牽引できるのか疑問が残ります。

 将来の展望についてJR東日本に聞いたところ、「E26系の今後についてはお答えできません」との回答。未来永劫維持することは不可能でしょうが、運行されるあいだは「豪華寝台列車」としての憧れを集め続ける存在であってほしいものです。

「カシオペア」は短距離運行でも人気があるため、JR東日本が今後も維持するであろう大型蒸気機関車が牽引する旅行商品もありかと筆者は思います。重連ならE26系でも牽引できるでしょうし、蒸気機関車牽引ということで、現在より高額でも売り切れるかもしれません。

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