
LCCのピーチが、「世界最長の航続距離を持つ単通路旅客機」という異色のコンセプトを持った新型機「エアバスA321XLR」の導入を決定しました。同社は今後「A321XLR」をどのように用いるのでしょうか。
「単通路機」ながら約11時間・約8700km飛べる
ANA(全日空)グループのLCC(格安航空会社)、ピーチが、新型機「エアバスA321XLR」の導入を決定しました。このモデルは国内航空会社として初導入となり、通路1本の「単通路機」でありながら約11時間・約8700kmを飛ぶことが可能で、「世界最長の航続距離を持つ単通路旅客機」という異色のコンセプトを持ちます。A321XLRを同社はどのように使うのでしょうか。
「A321XLR」は、ヨーロッパの航空機メーカー、エアバスの単通路旅客機「A320」シリーズの胴体延長型「A321neo」をベースに開発されたモデルで、2024年から実運用が開始されました。
セールスポイントである約8700kmの航続距離は、同社が拠点にしている関西空港を起点とした場合、スペック上ではアジア地域、オーストラリア、インドはもちろん、ハワイ、そしてカナダやヨーロッパの一部エリアまで直行便を飛ばすことができます。
一方ピーチは2024年度から国際線路線ネットワークの強化を進めており、これまでの台湾・韓国・中国路線に加えて、2024年12月には関西~シンガポール線を開設しました。さらに2025年度の事業計画でも「今後新たなアジア路線の開設も検討します」とし、2025年4月からはソウル便の増強を行う予定です。
2025年現在、ピーチの中距離国際線は先述のシンガポール線に加え、関西~バンコク線の2つ。これらの路線には国際線仕様の客室を持つ「A321LR」を投入しています。このA321LRからさらに航続距離を伸ばしたのが、今回導入が発表された「A321XLR」です。なお、現在同社が保有する「A321LR」も3機体制で、「A321XLR」の発注数も3機となっています。
「航続距離を活かした新路線」可能性は?
そしてこの機の導入発表にともなって同社は「日本からアジア・オセアニアをカバーすることができる」とし、「中距離国際線として乗り入れることができる都市がさらに増えることになります」とアピールしています。
ピーチを傘下に持つANAホールディングスの担当者は「A321XLR」をどのように使用するのかについて「現時点でこういう路線で決まっているわけではない」としながらも、「A321LRの後継機的な位置づけもないことはないですが、可能であれば、A321XLRの性能を最大限活用できるような路線の展開をピーチには検討していただきたいと、私たちも考えています」とコメントしています。
現状でピーチは、A321XLRの長い航続距離をひっさげ、新たな国際線ネットワークを構築する可能性が高いといえるでしょう。一方で先述した欧米などの「スペック上の航続距離ではギリギリ届くような就航地」へ進出する可能性は低く、新たな路線の就航範囲は「中距離」とされるアジア、オセアニア方面にとどまりそうです。