
香港国際空港で、周辺一帯を巻き込んだ大規模な改修・開発工事が行われています。アジアのハブ空港として、第3滑走路の建設に加え、商業施設やスポーツ施設、ホテル、文化・芸術施設、そして無人交通システムまで整備されます。
「Airport of the year」で何度もトップに
香港政府は2011(平成23)年、新しい空港の拡張工事に関するマスタープランを作成し、それに沿って空港および空港周辺で建設を進めています。そのひとつが、総事業費1415億香港ドル(約2兆8000億円)をかけた香港国際空港の第3滑走路です。
そもそも香港国際空港は、航空会社の格付けを行うイギリスの「スカイトラックス社」が選ぶ「Airport of the year」で、2000年代に何度もトップに輝いた実績を持ちます。しかしその後は、より最新の施設を備えたシンガポールのチャンギ空港などにその座を奪われました。とはいえアジアのハブ空港としての機能は失われていません。逆に航空需要の一層の高まりを受け、現在、大規模な改修が行われています。
第3滑走路は現行の2本の滑走路の北側に、650ヘクタール分を埋め立てて建設。全長は3800m、幅は60mです。そこに63機が駐機できるY字型の「T2コンコース」の建設を進めています。ほかにも、格安航空会社用だった第2ターミナルを増築中で、こちらは2025年中に一部が再オープンする予定です。
晴れて工事が完了すると、2035年には年間利用者数が1億2000万人、貨物処理量が1000万トンに増加する見込みです。
さらに空港の東側でも大規模開発が進められています。ここは「SKYTOPIA」と名付けられ、ショッピングモール、ホテル、コンサートホール、芸術施設、ヨットハーバー、マリンスポーツ、レストランなどが整備されます。総工費1000香港ドル(約2兆円)という巨大プロジェクトです。
中でも、総工費の2割(約4000億円)をかけて整備中なのがショッピングモールです。ここは「11 Skies」という名称で、延べ床面積は380万平方メートルもあり、2025年中の開業を目指しているとのこと。モール内にはキッザニアや、VRを使って深海を探検する「Vquarium」、「くまのパディントン」のテーマパークなどが入居予定です。買い物天国の香港ですから、小売店などの数は800、飲食店は120以上だそう。
ゆりかもめのような無人交通システムも
「11 Skies」の北側に隣接する形で、ラグジュアリーホテルも建設されます。その反対の南側には芸術専用の施設も開業予定で、近年、アートのハブになることも目指す香港においてはその一環といえるでしょう。
なお、ラグジュアリーホテルの北側には「亜洲国際博覧館(AsiaWorld-Expo)」という、東京でいうならビッグサイト、幕張メッセのような大型展示場があります。過去には安室奈美恵さんやX JAPANをはじめ海外のアーティストがコンサートを開催しており、香港市民にもよく知られているのですが、その第2期棟が建設されます。コンサート会場は2万人が収容可能で、2028年の竣工を目指します。
香港とマカオのあいだには世界最長のつり橋「港珠澳大橋(HZMB)」がありますが、それを利用するには税関を通過する必要があります。税関は、空港東側の埋め立て地に所在し、このたびの開発では空港と一体化されます。
まず、500のヨットが停泊できるヨットハーバーを設け、富裕層をターゲットにリゾート型のホテルを建設します。続いて空輸された世界の新鮮な野菜や魚介類を販売する海鮮市場や、ボウリング場など様々なスポーツを楽しめる施設、2年以内には1.5kmに及ぶプロムナードも整備され、海沿いで食べ歩きが楽しめるように多くの飲食店が軒を連ねる計画です。
これらの中心となるのが「海湾広場」で、新年や旧正月のカウントダウン、大型イベントなども開催できます。
また、各施設どうしの移動を楽にするため、ゆりかもめのような無人交通システムも整備されます。空港関係者が多く住む東涌(Tuns Chung)という地域とも接続され、2028年の開通予定です。なお2022年11月に完成した、世界最大の旅客機A380が通過できる巨大連絡通路「スカイブリッジ」も、今回の大規模開発の一環です。
全てが完成すると、あたかも新しいひとつの街が出来上がるような感じでしょう。そして、再びナンバーワン空港に返り咲くことができるのか、注目です。