
2025年春、東海環状道が2区間で延伸。さらに夏にも延伸を控えています。全通はまだ先ですが、2025年、東海圏は“道の常識”が変わりそうです。何ができるようになるのでしょうか。
東海環状道「岐阜」ほぼ全通に近づく
2025年春、東海環状道が2区間で延伸します。3月29日には三重県内のいなべIC~大安IC間が、そして4月6日には岐阜県内の山県IC~本巣IC間が、それぞれ開通。さらに夏にも延伸を控えています。これによって、中京圏の移動は大きく変わりそうです。
東海環状道は名古屋市の30~40km圏域を環状に結ぶ道路で、全線127.8km。現在は、地図上で「左上」区間と、「左下」区間に未開通部がありますが、4月までの開通で約8割が完成します。
4月6日に開通する「左上」の山県IC~本巣IC間は、ちょうど濃尾平野の北の端を貫くような区間です。山県ICから、次の岐阜ICまでは山で隔てられていますが、そこを4930mの岐大トンネルで一気に貫きます。岐阜ICは市街地の北のはずれ、岐阜大学付近に設けられます。
次の本巣ICまでの間も、平野部に張り出した2つの小高い山をトンネルで貫きつつ、平地を高架橋で抜けていく区間。本巣ICは樽見鉄道沿いの国道157号に接続します。
ここは樽見鉄道の駅もある大型商業施設「モレラ岐阜」に至近。地域の拠点となるエリアにICを配置しています。ちなみに、山県市-本巣市間(役所間)は、一般道で30分かかっていたところ、東海環状道経由で約18分に短縮されるそうです。
その先、既存開通部の終点となっている大野神戸ICまでの6.8kmは、本巣ICまでと同時開通の計画でしたが、一部の高架橋の下部工事で“玉石”がゴロゴロ出現し、その処理に時間を要し、開通が「2025年夏」にずれ込みました。
国土交通省 岐阜国道事務所の桑原良輝副所長によると、本来なら1年延期してもおかしくないほどでしたが、工程の工夫によって数か月のズレに抑えたと振り返ります。夏の開通予定に変更はなさそうです。
ちなみに、本巣IC-大野神戸IC間に途中ICはありませんが、「本巣PA」が新設されます。ここは商業施設こそないものの、本巣市が2023年に開園させた公園「もとまるパーク」と連結し、PA利用者も公園を利用可能です。高さ12mのいかにも楽しそうな子供向けの遊具や、ドッグランがあるほか、イベント時にはキッチンカーなども出るようです。
「一宮も小牧も混んでる!」→バイバーイ
大野神戸ICまでが開通すると、東海環状道の「左上」すなわち東海環状道と名神高速をつなぐ区間(美濃関JCT-養老JCT)がつながります。この影響は大きそうです。
名神の大きなボトルネックとなっているのが、東海北陸道が接続する「一宮JCT」付近です。名神の滋賀方面ー東海環状道の富山方面を行き来する場合、東海環状道を経由することで、一宮JCTを避けることができます。
一宮JCT付近の下り線については、2024年9月に片側3車線運用が始まったことで渋滞が緩和していますが、東海環状道の開通によって、さらなる緩和が見込まれるといいます。
それだけでなく、中央道の長野方面と名神の滋賀方面を行き来する場合も、東海環状道が視野に入ります。2025年度もリニューアル工事による交通規制が予定されている中央道の土岐JCT-小牧JCT間や、名神一宮も、まるまる東海環状道で避けることが可能になるのです。
中央道の土岐JCTから名神の養老JCTまでストレートにいけば60.5km、東海環状道経由では77.4kmです。中央道・名神が渋滞している場合は迂回が効果を発揮することもあるでしょう。
東海環状道「最後の未開通区間」となるのが、名神以南の「左下」にあたる、岐阜-三重にまたがる養老IC-いなべIC間です。県境の「養老トンネル」工事で多量の湧水などに見舞われており、2026年度の開通が予定されているものの、さらに延期の可能性もあります。
この区間が全通すれば、たとえば「東海北陸道から愛知を通らず三重県へ」「伊勢湾岸道から北陸道へ」といった、これまで考えられなかったような移動も可能になります。
東海環状道が全通すれば、東京・大阪に先駆けて、中京圏で計画された環状道路網が概成します。国は高速道路の将来ビジョンとして、渋滞状況に応じて高速道路料金を機動的に上げ下げすることで、空いている区間に誘導する料金体系を打ち出していますが、そのような利用は環状道路網が完成してこそ。東海環状道の全通は、もしかしたら料金面でも、これまでの“常識”を覆すきっかけをつくるかもしれません。
※一部修正しました(2/27)