ラッシュ時に山手線が止まった… 「信号が変わらない」は故障じゃない!? 事故を未然に防いだ仕組みとは

JR山手線が朝ラッシュ時間帯に止まるトラブルがありました。原因は赤信号が切り替わらなくなったため。ただ、さらに突き詰めると、レールにひびが入っていたことも判明しました。なぜレールにひびが入ると、赤信号のままになるのでしょうか。

列車の有無を検知する仕組み

 2025年2月10日(月)午前、JR山手線内回りの浜松町~新橋間で、列車の運行が止まるトラブルがありました。原因はレールにひびが発生していたためで、これによって信号が赤から切り替わらず、運行できなくなったのです。なぜ、レールにひびが入ると赤信号のままになるのでしょうか。

 内回り列車が運行を見合わせた当初は、「信号確認」という案内がなされていました。報道によれば、「運転席に表示される信号機が赤信号に相当する表示をしたまま変わらない」というもので、現地を確認したところ、レールにひびが発生していたことがわかったのです。

 通常、列車が走っている線路には、列車を検知するための電気が流れています。線路は2本のレールが長くつながっていますが、電気的にはある程度の間隔で区切られています。線路脇に信号機がある場合は、隣の信号機までのあいだが1区間です。

 電気的に区切られた場所では、片側の端から2本のレールに電気を流し、もう一方の端では2本のレールから電気を受け取る回路を設けています。ある信号機の位置から電気を流し、隣の信号機の位置で電気を受け取る、と考えると理解しやすいかもしれません。

 線路上を列車が通ると、レールを介した電気回路を車輪が短絡(ショート)することになり、電気を受け取る側には電気が流れなくなります。電気が流れなくなったことを検知することで、「この場所に列車がいる」という判定をしているのです。

 さらに、この回路と信号機を関連付けることで、列車の後ろに位置する信号機を赤信号としています。

レールにひび→赤信号となるメカニズム

 ショートすることで赤信号とする仕組みですが、これ以外にも何かしらの原因で電気を受け取る側に電気が流れなくなると、赤信号が表示されるようになっています。

 今回はレールにひびが入ったことで、レールに電気が流れなくなり、結果として赤信号のままになったと推察できます。この場合、「列車がいないのに『列車がいる』と判定されているが(赤信号)、これはおかしいのでは」と、設備側に何かしらの不具合があると判断することができます。この判断をもとに設備の状態を確認したところ、レールにひびが入っていることがわかった、という顛末です。

 このように、設備が故障した場合も電気が流れなくなるので、赤信号となって列車の運行を止めることができます。こうした、有事の際に安全側に設備が壊れる仕組みを「フェイルセーフ」と呼びます。今回の事例では、ひびが入ったレールの上を列車が走行するような危険な状態を、赤信号が未然に防いでくれたといえるでしょう。

運転台に表示される「赤信号」

 また、山手線では原則として線路脇に信号機を設けず、運転台に信号を表示する仕組みを備えています。列車はレールから信号情報を受信して運転台に表示しているのです。

 仮に、レールに流した信号情報を受信することができなくなった場合、列車側では「赤信号」と判断して列車を止めるように設計されています。これもフェイルセーフの考え方のひとつです。

 山手線の車両では、速度計が画面上に表示されますが、この速度計には許容された速度の上限が表示されています。前を走っている列車や急な曲線に近づいた場合は、許容された速度が下がっていき、前の列車の真後ろに付いた場合などでは速度が0、つまり「赤信号」となります。

 さらに、列車の速度が許容された速度を上回りそうになった場合には、自動的にブレーキがかかる仕組みも備えています。こういった車両側の制御も、レールから送られる信号情報があってこそです。

 列車の安全運行は、幾重にもガードされた仕組みによって保たれています。通勤ラッシュの時間帯に列車の運行が止まるのは困ったことですが、今回の事例は、ひびの入った線路を前にして、安全に列車を止める仕組みが正しく機能していた証でもあるのです。

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