第407話 2030年までがラストチャンス 日本が持続的成長を実現するには?

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内の喫茶店でアイスコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。


神様:6月21日、「骨太の方針2024」が閣議決定されました。岸田総理は同日の記者会見で、2024年1-3月期の名目GDPが過去最高水準の598兆円となり、安倍政権が2020年での達成を目指していた600兆円が達成目前であることに言及しています。

T:私も会見を見ました。骨太の方針では2040年頃には名目1,000兆円程度の経済を視野に入れているとのことでしたね。しかし、少子化が加速している中、実現可能なのでしょうか?

神様:労働人口が減少すれば、日本経済の成長は低迷するでしょう。しかし、それを解決するのが岸田政権の仕事です。今から2030年度までがラストチャンスです。

T:2030年には団塊ジュニア世代が高齢者となり、2030年度以降では人口減少が加速すると言われています。今が少子化解消のラストチャンスであるわけですが、経済についてもラストチャンスということですね。

神様:政府は2030年度までに、DX、GX、投資の拡大、欧米並みの生産性の向上、高齢者の労働参加、女性の正規雇用への転換の促進などを進め、日本経済が持続的な成長を行えるようにしなければいけません。

T:ところで、欧米並みの生産性向上を、とのことですが、欧米でも先進国では高齢化が進んでいるのですよね?各国はどのように対応しているのでしょうか?

神様:おっしゃる通り、欧米先進国でも高齢化が進んでいます。一方で、欧米での雇用者数を見ると、コロナ禍以降は緩やかな増加基調にあることがわかります。

T:それはなぜでしょうか?

神様:外国人労働者の活用が活発なのです。欧米各国での政策はまちまちではありますが、高度な技能を持っている外国人労働者を積極的に受け入れている国があります。一方で、国家安全の観点からは不法な外国人労働者の入国を厳しく管理しているようです。

T:なるほど。日本では外国人労働者はどのくらいいるのでしょうか?

神様:厚労省によると、2023年の日本における外国人労働者は、204万8,675人(2023年10月末時点)となり、外国人雇用状況の届け出が義務化された2007年以降で最多となりました。日本では、生産性向上や国内人材確保のための取り組みを行っても人材の確保が困難な状況にある産業については、「特定技能」という在留資格を設け、専門的な技能を有する外国人労働者を受け入れています。今年3月の閣議決定では、対象分野・受入れ見込数を拡大することが決定されました。

T:日本においても、外国人労働者の活用が生産性向上に不可欠ということですね。

神様:どのように活用するかが重要です。欧米での時間あたり実収賃金をみると、2020年以降右肩上がりで上昇していることがわかります。欧米は日本と比較して、相対的に労働分配率が高いのです。

T:労働分配率とは何でしょうか?

神様:労働分配率とは、付加価値額に対して人件費を示す指標です。企業が新たに生み出した価値のうち、人件費にどれだけ分配されたかを示します。労働分配率が高いということは、企業が新たに生み出した価値のうち、人件費に分配された割合が高いことを意味します。物価が上昇している中で、企業業績は好調を持続しています。そのため、賃金を上げる余力があるのでしょう。

T:優秀な外国人労働者であれば、賃金が上がらなければすぐに他社へと流出してしまうでしょうから、つなぎとめるためには高い賃金が必要ですね。

神様:また、企業側としては賃金の上昇に見合った貢献を期待します。専門技能がある人にはより高度な仕事をしてもらうことで労働の効率化を図ります。このようにして、生産性向上を図っているのです。

T:日本もそのような取り組みが必要ということですね。賃上げ、設備投資の拡大による省力化・自動化、高齢者や女性の活躍増進、外国人労働者の活用、労働の効率化と、2030年に向けて取り組むべきことがたくさんあります。まさに今が踏ん張り時ですね。

(この項終わり。次回7/24掲載予定)

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