
<ゴルフ日本シリーズJTカップ 事前情報◇28日◇東京よみうりCC(東京都)◇7023ヤード・パー70>
プロ12年目にしてようやく手に掴んだ涙の初優勝。喜びを噛みしめるのもつかの間、今週から最終戦の日本シリーズが始まる。初めて30人の戦いに駒を進めた27歳の鍋谷太一は、大会への思いを明かした。
16歳にプロ転向してから長かった初優勝。最終ホールのグリーンでは涙を流し優勝を喜んだ。「優勝した直後とかはリアルな夢じゃないだろうなと疑っていた」。夢にまでみた優勝を手にして、実感が湧くまでに時間がかかったようだ。
高知から移動を経て東京へ。「携帯の充電でいうと25%」と優勝争いでかなりエネルギーを失っているが、「初日までには85%までに持っていきたい」と回復に努める。まずは体調を整え今年最後の戦いに挑む。
そんな最終戦に、鍋谷は初めて出場する。「超エリートの戦い。外出てないから雰囲気はわからないけど」。火曜日はコース入りするも練習ラウンドは行わず、今日のプロアマからコースをチェックする。「初日は石川遼さんと稲森佑貴さんと一緒。遼さんを見て育った。初日から回ることは初めてなのでうれしい」。目標としていた最終戦出場に加え、憧れの存在である石川とのラウンドも控え、喜びもひとしお。その石川からも「おめでとう」と祝福のメッセージをもらえたことが「一番うれしいくらい」と笑顔がこぼれる。
初優勝を遂げたばかりだが、2週連続Vへの挑戦権も得た。本人は「ほぼ無理だと思う(笑)」と笑い飛ばしたが、それは東京よみうりCCの“怖さ”を知っているからかもしれない。このコースはプライベートでラウンドしたこともあり予行練習済み。今年もラウンドを行い、本戦同様パー70の意識で回るも「1オーバー。ガチで回って、これ試合やばいな(笑)」と難コースに苦戦した。名物の18番は「やっとのボギー。距離が長くてあのグリーンだから」。さらに「9番とか10番もやばい。10番で手前からパターで打ってラフに戻ってきて3打目より4打目の方が遠い(笑)」と難しいイメージが強く残っている。
今年は、開幕から3戦連続で予選落ち。夏場に2週連続3位と調子が上向きかけたところで腰痛を発症。10月の「ACNチャンピオンシップ」では第1ラウンド途中で棄権もした。それを乗り越えての初優勝とジェットコースターのような1年を送った。「あきらめずにやるべきことができて良かった」と困難にぶち当たりながらも前に進み続けた結果、ようやく光明が差した。最終戦で激動のシーズンを締めくくるにふさわしいプレーを見せたい。(文・齊藤啓介)