「あれ、橋がなくなってる…」 高速道路の「跨道橋」が次々に撤去されるワケ 実は高速利用者にメリットも?

老朽化した歩道橋などの撤去が全国的に進んでいますが、実は高速道路でも似たようなことが起こっています。ドライバーの上空をまたぐ「跨道橋」が、相次いで撤去されているのです。

東北道に続き関越道でも跨道橋撤去「夜間通行止め」に

 関越道の鶴ヶ島JCT~東松山IC間(上下線)で2023年11月7日(火)、跨道橋の撤去に伴う夜間通行止めが行われます。通行止めは10km以上にわたり、複数のICが利用不可になることから注意が呼びかけられています。

 夜間通行止めを伴う跨道橋の撤去は、10月3日にも東北道の岩槻IC~久喜IC間で行われたばかり。実は、こうした高速道路に架かる跨道橋の撤去が全国で増えているのです。主な理由は「老朽化」にあります。 高速道路の跨道橋に限らず河川に架かる橋でも、全国的に老朽化の問題が顕在化しています。そうしたなか、国土交通省によると、約9割の地方公共団体が、現状の予算では既存の道路施設を維持管理しきれなくなる懸念を抱えており、橋梁管理に携わる土木技術者が存在しない市区町村は、町で2割以上、村で5割以上になっているといいます。 そこで国は、老朽橋の撤去か、架け替えか、はたまた維持管理が容易な人道橋などへの“ダウンサイジング”といったことを推奨しています。 なかでも高速道路の跨道橋は、落橋などによる事故が起こった場合の影響が甚大です。点検や補修などによる高速道路本線の規制も削減できることから、道路会社側も地方公共団体に対し跨道橋の撤去支援を行っています。たとえばNEXCO中日本名古屋支社では、2024年度から2028年度までに中央道と名神高速で9つの跨道橋撤去を計画しています。 こうした跨道橋は、もともと高速道路の建設で地域が分断されることに対し、高速道路予定地にあった既存道路の通行を確保する「機能補償道路」として造られ、完成後に自治体などへ移管されたものが多いです。しかし、道路ネットワークの変化や地域の人口減により使われなくなり、維持が困難となる橋が増えています。

人が通らなくなったら動物が……

 たとえば山梨県西桂町で中央道をまたいでいた2本の跨道橋は、1969年の建設当時こそ木材の搬出で多くの通行があったものの、21世紀に入ると通行する人がほとんどいなくなり、山から降りてきた動物が橋を渡り作物を荒らしていたそう。そこで町は両橋とも防護柵を設けて通行止めにしましたが、後世にリスクを残さない観点から、2017年に撤去を実施しました。これは老朽橋撤去の事例としてよく取り上げられるものです。 NEXCOなどは橋の撤去について、一時的に負担が生じたとしても、長期的に見れば有効な手段になると説明しています。 また、跨道橋の撤去が、下を走る高速道路の利用者にとってもメリットになることがあります。11月に行われる関越道の跨道橋撤去では、これにより関越道の当該区間の拡幅が可能になるため、付加車線整備の一環としても位置付けられています。10月の東北道で行われた跨道橋撤去も、高速道路の側道になる国道のバイパス整備の一環で行われました。 使われている跨道橋ももちろん多いですが、橋の存在が逆に支障となり、高速道路側の拡幅などを難しくしている箇所もあるのです。

 ちなみに、高速道路建設時の機能補償で設けられた橋は道路に限りません。関越道では10年前の2013年、今回とほぼ同じ区間を通行止めしたうえで「鉄道橋」の撤去が実施されました。 これは、東武東上線の高坂駅から延びていたセメント会社の貨物線の橋で、1984年の廃止から架線柱なども残したまま放置状態であったため、撤去の際は鉄道ファンの間でも話題になったようです。このときも、関越道 坂戸西スマートICの新設と付加車線の整備工事に合わせて跨道橋の撤去が行われています。

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