茨城県を走ったJR西日本の車両!? かつて存在した不思議な定期列車とは 背景にあるルール

山陽新幹線のN700系や寝台特急「サンライズ」に使われる285系などは、JR西日本が所有する車両でありながら東京圏まで乗り入れます。今や希少な例ですが、かつてはある事情から、東京圏のみで完結する運用についた車両がありました。

正体は「急行」

 2023年10月現在、JR西日本が所有する車両のうち東京圏まで達するのは、定期列車では東海道・山陽新幹線のN700系電車、北陸新幹線のW7系電車と、寝台特急「サンライズ」に使われる285系電車のみです。かつては寝台列車などで、西日本からはるばる東京圏まで直通(越境)する車両も見られました。

 ただし2010年代まで、東京圏内のみで運行を完結してしまうJR西日本の車両が存在しました。つまりJR東日本の路線しか走らなかったわけです。それは宇都宮線と高崎線のライナー列車だった「ホームライナー古河」と「ホームライナー鴻巣」。上野駅(一部は新宿駅)発として、夜間帯の下りに複数便が設定されました。 そのうちの1便に、金沢総合車両所(石川県)に所属していたボンネットタイプの489系が使われました。特急「雷鳥」「しらさぎ」「白山」などに使われた、国鉄特急形電車です。これがなぜライナー列車として、JR東日本で使われたのでしょうか。 実はこの489系は、すでに当時でもわずかとなっていた急行列車に使われていました。それは上野~金沢間を結んだ「能登」です。上野駅を日付が変わる前に発ち、金沢駅には早朝に着く夜行列車でもありました。

自社線へ行かない列車は私鉄でも

 上野~金沢間のうち、JR東日本の管轄は上野~直江津間。これは全区間の約65%にあたります。鉄道会社には車両を融通し合う際、その使用料のほか線路の使用料などが相互に発生します。走行距離が全く同じなら負担は均等になりますが、急行「能登」の場合はJR西日本が、JR東日本の負担する車両使用料を超えて、線路や設備を使用しました。 そこで、その偏りを解消するために運行されたのが先述のホームライナーでした。JR東日本は、JR西日本へ対する線路使用料などの“貸し”を、自社管内で489系を運行して発生する車両使用料で相殺したわけです。結果、金沢に拠点を置く車両が、茨城県(古河駅:「ホームライナー古河」として)まで顔を出すことになったのでした。 なお489系のダイヤは、「能登」として金沢駅へ向かう前に、上野~鴻巣~上野~古河~上野と、ホームライナー運用を2便こなすというものでした。 さて、急行「能登」は2010(平成22)年3月13日をもって定期運行を終了。489系も運用を外れました。臨時列車となった「能登」には485系電車が使われるようになりましたが、2012(平成24)年2月を最後に運行されていません。

 489系の例に漏れず、相互直通運転を行う私鉄でもこのような事例は見られます。走行距離のほか車輪などの摩耗具合も鑑み、例えば直通先の会社の車両がそこへは行かず、他社路線で完結する運用につくといった具合です。

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