福岡の大江戸線? 地下鉄七隈線の最新型3000A系 「博多延伸」で車両はどう変わった?

近年、JR各社を中心とする鉄道会社は、通勤形車両の改良を進めています。ここ数年で登場した新型車両には、それまでは見られなかった設備や性能も。今回は、福岡市営地下鉄七隅線の博多延伸に備えて登場した3000A系を紹介します。

ベースの前代3000系はどんな電車?

 通勤形電車といえば、ロングシートの座席とつり革以外はほとんど設備もなく、殺風景な車両というイメージがありましたが、近年はサービス改善の動きが顕著です。フリーWi-Fiや空気清浄器、トイレが設置されるなどしています。

 そうした車両は公営交通事業者でも取り入れられており、路線の延伸を機に2022年に登場した福岡市営地下鉄七隈線の3000A系電車もそのひとつ。2005(平成17)年に登場した3000系電車を大きく改良した「Advance」(進化)タイプです。 そもそもベースとなった3000系は、七隈線開業時に導入された車両です。デザインしたのは、500系新幹線や東京メトロ10000系電車を手がけたアレクサンダー・ノイマイスター氏。1両の長さが16.5m、全幅2.49m、全高3.14mの鉄輪式リニアモーターミニ地下鉄で、都営地下鉄大江戸線とほぼ同じサイズの車両です。 アルミの加工性を活かし、スピード感をもたせたという丸みを帯びた前頭部が特徴で、車体は沿線の油山の稜線を表現した緑色と、室見川の流れを表現した水色で構成。車内はロングシートですが、着座スペースが1人ごとに分割されています。壁面の一部は木目調となっており、すっきりとしてお洒落な内装です。連結部分はガラス扉であり、明るく広々とした室内をデザインで感じさせています。 車内騒音の軽減や、車いす・ベビーカースペースも充実させた「人に優しい」電車であり、グッドデザイン賞や鉄道友の会ローレル賞を受賞しました。

「より人に優しい電車」

 そのような3000系を進化させた3000A系は、「より人に優しい電車」となっています。最大の特徴は「立ち座りしやすいシート」。優先席の一部で座面を60mm高くし、仕切りとなる肘掛けを設けた座席です。 座席鉄である筆者(安藤昌季:乗りものライター)は、この座席に座りましたが、肘掛けに掴まることで立ちあがりやすいだけでなく、背もたれの傾斜角度も適切で、座り心地にも優れた座席に感心しました。全国の優先席で採用してほしいと感じます。 通常のロングシートも座面がお尻側で下がっており、こちらも背もたれに適度な傾斜が付けられています。通勤形電車は、背もたれの角度を垂直にすることで乗客の背筋を伸ばし、通路に足を出させないつくりが数多く見られますが、こちらの座席はそのようなことはなく、ゆったりと座れます。クッション性もよく、出来栄えのいい座席です。一般の座席は扉間7人掛けですが、両先頭車では3密を回避し、乗降しやすくするために5人掛けに変更されています。 またつり革、手すり、座席には抗菌・抗ウィルス素材も使用され、感染症対策を強化しています。 インテリアは、博多織の五色献上色である「紫」「青」「赤」「黄」「紺」をイメージした配色。木目柄も「櫛田の銀杏」で有名なイチョウの木をイメージした、より明るいものとなっています。 ドア上には開閉のタイミングを確認できるランプが新設され、聴覚障がい者に配慮されています。また、車内の案内表示器が液晶式に変更され、視認性が向上しました(3000系でも一部は液晶式に換装されている)。 そして、福岡市営地下鉄では初めてとなる車内防犯カメラを設置。セキュリティ向上が図られています。

 外観塗装は車体上部がスカイブルーに変更されました。これは福岡空港と、地下鉄3路線、JR線、西鉄天神大牟田線がつながるイメージと、新型コロナウィルス終息後の「希望の未来を示す、広く澄んだ青空」を表したものです。 高いデザイン性と利用者への配慮が感じられる3000A系。意識して乗車すると発見がある電車でした。

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