クリミアのロシア拠点に大損害「ストーム・シャドウ」とは? 西側の巡航ミサイルなにがスゴい?

ウクライナのクリミア半島で巡航ミサイル「ストーム・シャドウ」による攻撃が行われ、ロシア軍の艦艇や司令部に多大な打撃を与えたと噂されています。攻撃の主役となったこの兵器は一体どのような性能なのでしょうか。

射程距離の長さは性能の一部でしかない!

 2023年9月13日に行われたロシア軍セヴァストポリ艦船修理工場への攻撃、さらに9月22日の黒海艦隊司令部への攻撃と、ウクライナ軍が立て続けにクリミア半島のロシア軍拠点への攻勢を繰り広げています。

 これらの攻撃で使用されたのがイギリス軍から供与された巡航ミサイルである「ストーム・シャドウ」といわれています。キロ級潜水艦「ロストフ・ナ・ドヌー」と、ロプーチャ級揚陸艦「ミンスク」に甚大な損傷を与えたほか、黒海艦隊司令部への攻撃では、ロシア南部軍司令官であるアレクサンドル・ロマンチュク大将が戦死したのではないかと噂されています。 攻撃成功により、ウクライナ空軍はさらなるミサイルの支援を要請していますが、「ストーム・シャドウ」とはどのような性能のミサイルなのでしょうか。「ストーム・シャドウ」はフランスとイギリスによって1990年代末に開発され、2000年代から運用されている巡航ミサイルです。最大射程は560kmとされていますが、ウクライナに供与されたタイプは約250kmと射程が短く設定されているようです。対空ミサイル防空網の外から発射する、いわゆる「スタンドオフミサイル」に分類されます。 弾薬も、通常の弾薬以外にクラスター爆弾、さらには核弾頭を積むことも可能です。攻撃目標は、敵の防空施設、軍事施設、司令部、補給のために必要なインフラなど、後方の重要施設の攻撃に適しているだけではなく、「タンデム弾薬」に分類される、二重弾頭を積んだBROACH(ブローチ)弾頭であるため、分厚いコンクリートや鉄筋で構成された「バンカー」に守られた施設の内部も攻撃することが可能です。

実はステルス性もある

 ただ「ストーム・シャドウ」は最大速度マッハ0.8と亜音速のミサイルであるため、敵の対空網に引っかかれば比較的容易に撃墜できるとされているものの、発射されたミサイルはレーダーを回避するため下降し、かなり低空を飛行することが特徴。またステルス性能もあり、レーダーの視認性も低いとみられています。 そして、航空機から発射できるのが「ストーム・シャドウ」最大の魅力です。しかも母機のレーダーで誘導する必要のない撃ちっぱなしの「ファイア&フォーゲット」ミサイルであるため、撃った後は敵に追撃が来る前に離脱することができます。 さらに、ユーロファイター「タイフーン」や「ラファール」など、西側陣営のマルチロール機を持っていなかったウクライナ軍でも、短期間のうちにSu-24Mから同ミサイルを発射できる能力を付与しているところからすると、簡易的な改造でも十分に発射可能になることがうかがえます。「ストーム・シャドウ」の使用の詳細に関して、ウクライナ国防省は明らかにしていませんが、イギリスが供与を発表した2023年5月11日の数日後には、ルハンスク攻撃に使用されたほか、6月22日のクリミア北部と本土側のヘルソン州を結ぶチョンガル橋攻撃にも使用されたとみられています。 同ミサイルは2011年のリビア内戦では、40発弱が発射され、97%が目標破壊に成功したといわれています。今回のロシアとの戦いでは防空網の厚さが違うため、これほど高い成功率は誇っていませんが、クリミア半島では前述のように、潜水艦と揚陸艦が損害を受けたほか、本来半島を守るはずだったS-400対空ミサイルも標的となり、撃破されているようです。

 こうした、一連の攻撃が全て「ストーム・シャドウ」で行われているわけではないと思われますが、ウクライナ空軍のユリー・イフナット報道官は「防空システムが強固なはずのクリミアでも西側の巡航ミサイルには対処できない。ミサイルは迎撃されたものもあるが、こうして目標に到達している」と「ストーム・シャドウ」などの巡航ミサイルを用いた攻撃の有効性を強調しています。※一部修正しました(9月28日11時28分)。

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