なぜ!? 常磐線からの上野東京ラインだけ「品川止まり」 直通したら便利そうもできないワケ

上野東京ラインが開業したことで、宇都宮線と高崎線、東海道本線が相互に直通運転を開始。宇都宮発伊東行きといった長距離列車も設定されましたが、常磐線からの直通列車はすべて品川止まりです。品川以遠へ直通できない理由は何でしょうか。

「土浦発 国府津行き」などあったら便利そう?

 2015(平成27)年3月14日のダイヤ改正でJR宇都宮線(東北本線)、高崎線、常磐線と東海道本線を結ぶ「上野東京ライン」が開業し、北関東から上野駅や東京駅で乗り換えることなく品川駅や横浜駅方面へ向かえるようになり、利便性が大きく高まりました。  この上野東京ラインは現在も、宇都宮線と高崎線からの電車は東海道本線の沼津駅(静岡県沼津市)もしくは伊東線の伊東駅(同・伊東市)まで直通運転を行いますが、常磐線からの電車は上野駅からわずか10.4kmの品川駅までしか乗り入れません。常磐線の電車も横浜や小田原方面へ直通すれば、より利便性は向上するはずですが、なぜ品川止まりなのでしょうか。

●車両の仕様が異なる常磐線の2形式 理由のひとつとして、常磐線の車両は東海道本線の車両と仕様が異なるという点が挙げられます。常磐線は取手駅(茨城県取手市)と次の藤代駅(同)の間で供給される電圧が変わり、取手駅までは直流1500V、藤代駅から先は交流2万Vとなっています。そのため常磐線で取手駅から先の土浦方面に向かう車両には、直流・交流どちらの電化方式でも走行可能なE531系電車が使われます。 一方の東海道本線と宇都宮線、高崎線は直流1500Vで電化されているため、直流専用のE231系およびE233系電車が使われます。常磐線の電車が小田原方面まで直通し、より長い距離を運行したとすると、交直両用のE531系が広範囲に分散することとなり、相対的に取手以北を走れる電車が減ってしまいます。新規に製造すれば済みそうですが、当然ながら直流電車よりも機器が増える交直両用電車は、直流専用のE233系よりも高価です。

ダイヤ乱れ時に厄介となる

 なお常磐線にはE531系のほか、直流専用のE231系が品川~取手・成田(成田線直通)間で運行されています。こちらの車両であれば、性能的には東海道本線のE231系とほぼ同じ。東海道本線のE231系が取手駅まで乗り入れる代わりに常磐線のE231系が東海道本線に乗り入れれば、E531系の新造よりは安くつくかもしれません。

 しかし常磐線のE231系はトイレもグリーン車もない通勤形で、遠距離の運用を想定していません。そして特に、ダイヤが乱れた際に車両の融通が難しくなるという懸念が出てきます。 たとえばE531系が小田原方面まで直通したと仮定します。ダイヤが乱れたとき、東海道本線と宇都宮線、高崎線の車両であれば、形式が同一なので、柔軟に行先の変更が可能です。しかしE531系がそこに加わると、運転整理の際に「取手以北へ直通できる車両か否か」という判断が必要となり、ダイヤの柔軟性が損なわれます。 そのため常磐線の電車は、車両の新造を極力しないで済む範囲で旅客の利便性を向上させ、かつ折り返しができる設備を持つ駅ということで、乗り入れを品川駅までとしているのです。

二転三転した常磐線直通

 上野東京ラインの建設計画は、国鉄の分割・民営化前からありましたが、JR東日本となってからは、まずは1993(平成5)年に上野~秋葉原間を先行開業し、常磐線の電車を秋葉原駅まで延長運転する計画でした。宇都宮線や高崎線でなく常磐線が選ばれた理由は、将来、常磐新線(現・つくばエクスプレス)が開業し、上野止まりの常磐線から旅客が常磐新線に流れるのを防ぐ意図がありました。

 しかし後に、秋葉原駅の建設中止と東京駅まで一気に開業することに計画が変わり、乗り入れを行う系統も宇都宮線と高崎線へ変更。運転本数や上野駅のポイントの都合などから、常磐線は従来通り上野止まりとすることになったのです。 ただ2001(平成13)年に湘南新宿ラインが開業し、宇都宮線と高崎線の一部が上野駅を経由しなくなると、同駅を発着する電車が減少し、線路に余裕が生まれました。その余裕を常磐線の直通に充当したのが現在の運行形態です。 前述の車両の都合などにより、今後も常磐線の電車は品川止まりのまま推移すると思われますが、臨時列車では品川以遠と常磐線を結ぶ列車が、これまでに何度も運行されています。記憶に新しいところでは、2023年8月に開催された「伊東按針祭花火大会」の際、E531系ではないものの、常磐線の特急車両が初めて伊東駅まで乗り入れました。 意外な列車が意外な運転系統で運行される可能性は、今後もゼロではないでしょう。

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