まだ“狂騒曲”? 「宇都宮LRT」開業2週間後に乗ってみた スピードアップしたら課題も

国内の路面電車としては実に75年ぶりの新規開業となった宇都宮芳賀ライトレール線。開業から2週間後に乗ってみたら、朝ラッシュ時には満員の風景も。一方で今後の課題も見えてきました。

「LRT乗り場」ではなく「ライトラインのりば」

 2023年8月26日に開業した宇都宮ライトレール(宇都宮LRT)。雷が多いことから「雷都(らいと)」とも呼ばれる宇都宮・芳賀エリアを走っており、新規に建設されたLRTとしては日本で初めての例です。 開業から2週間あまり経過した様子を実際に乗車して、体験してきました。

 宇都宮ライトレールは、宇都宮市の東部に位置するテクノポリス(ゆいの杜)や清原工業団地、そして隣接する芳賀町の芳賀・高根沢工業団地といった大規模工業団地への交通手段として建設されました。この地域は公共交通機関が乏しく、ラッシュ時には自家用車による慢性的な渋滞に悩まされていたとか。そこで、定時性の高いLRTを通すことにより問題を解決しようというわけです。 なお、路線の正式名称は「宇都宮芳賀ライトレール線」といいます。一方で、使用される新潟トランシス製HU300形電車の愛称は「ライトライン(LIGHTLINE)」。だからか、宇都宮駅の案内表示には「ライトラインのりば」とあり、表記の揺れを感じました。これについては宇都宮市議会でも取り上げられており、2023年9月14日には、市側から芳賀町や運行会社と協議し「ライトライン」に統一したいとの答弁がなされています。 軌道敷内は右左折時や交差点での通過時を除き、自動車などの乗り入れが禁止されています。クルマは右左折時も軌道敷内で停車して待つことは許されません。そこで、道や停留所への通路と軌道が交差する場所(実質的な踏切)には、LEDディスプレイと音声による列車接近警報表示装置が設置され、注意喚起をしていました。

朝の通勤通学時間帯にはラッシュも

 開業から2週間あまり。朝のラッシュ時には通勤・通学客で満員となっており、当初の狙い通り自家用車や工業団地内各事業者のシャトルバスからシフトしつつある様子がうかがえます。 現時点では運賃の収受に時間がかかるなどの理由で控えめの本数となっていますが、今後本数が増えることで、より効果を発揮するのではないかと、筆者(咲村珠樹:ライター・カメラマン)は感じました。 昼間の時間帯は地域住民の足としての役割が期待されるものの、まだまだ「記念乗車」をする人も多い様子。起点の宇都宮駅東口停留場では、やってきた電車にスマホを向ける人や、電車をバックに記念撮影する姿が見受けられました。

 運賃は距離別制が採用されており、支払い時には現金のほか、宇都宮周辺のバス事業者(関東自動車とジェイアールバス関東)と共同で発行している交通系ICカード「totra(トトラ)」、そしてSuicaやPASMOなど主要な交通系ICカードが使えます。 ICカードの場合は乗車時に緑のカードリーダーへ、降車時は黄色のカードリーダーにタッチして決済する仕組みです。現金の場合は停留場にある機械で整理券を発券して乗車し、降車時は運転席後方に設置された料金箱へ整理券とともに運賃を投入します。料金箱には両替機のほか、ICカードのチャージ機能も搭載されています。このあたりはバスと同じといえるでしょう。 車内は一般席がボックスシート(クロスシート)で、優先席が肘掛け付きのロングシートになっていました。表面にはレザー調の生地も使われ、高級感を感じさせる仕上がりです。

70km/h運転を開始したら揺れ大丈夫?

 乗ってみると道路の立体交差などがあり、思っていたよりも登ったり降りたりの勾配区間が多い印象でした。立体交差は一般道を走る併用軌道区間だけでなく、LRT専用の高架区間が一般道を跨ぐ立体交差も存在しています。 勾配区間のうち、一番の難所といえるのが芳賀町工業団地管理センター前~かしの森公園前に存在する「谷」です。河岸段丘に挟まれた「谷津(やつ)」と呼ばれる地形なのですが、最大で60パーミルという急勾配を下って登る形となっています。 そんな急勾配を苦もなく登っていくHU300形電車。実は登坂できる最急勾配は67パーミルという設計で、思った以上にパワフルなのです。

 音も静かで快適でしたが、少し気になったのは直線でスピードが乗った時、わずかに首を左右に振るような「蛇行動(そのうちでも車体蛇行動)」を思わせる横揺れがあったこと。現在は最大40km/hで運転していますが、将来的には一部区間で70km/h運転を予定しているので、スピードアップでこの横揺れがどう変化し、乗り心地に影響を与えるのかは検証する必要があるかもしれません。 新しく宇都宮・芳賀地域の足としてデビューした宇都宮ライトレール。将来は宇都宮駅の西部へと延伸する計画もあることから、今後どのように定着し、車など他の交通機関と共存していくのか、推移を見守りたいなと感じました。

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