200年使われるかも!? 世界で愛用される重機関銃「ブローニングM2」は何がスゴイのか 誕生90年

2023年に誕生90年の節目を迎えたM2重機関銃。「12.7mm重機関銃」や「M2ブローニング」などの名前で知られるこの銃は、どのような要求で生まれ、メジャーになったのでしょうか。

フランス軍の機関銃見てひらめいた!

 陸上自衛隊の10式戦車を始めとして、90式戦車や16式機動戦闘車、さらには海上自衛隊や海上保安庁の艦艇にまで幅広く用いられている12.7mm重機関銃。この銃はもともとアメリカで開発されたもので、制式名称は「M2重機関銃」といいます。第2次世界大戦で多用され、イギリスを始めとした連合国でも広く使われたことで、親米諸国をはじめとして世界中に普及、屈指のメジャーな銃器となりました。 アメリカ軍が制式採用したのは1933年のこと。今年(2023年)でちょうど誕生90年を迎えるご長寿機関銃を、改めて振り返ってみましょう。

 M2重機関銃が誕生することになったきっかけは、第1次世界大戦です。激戦が続く中、フランス陸軍の機関銃開発局では、11mm弾を使用するホチキス社製の重機関銃に関する試験が進められていました。従来の6.5mmや8mmといったライフル弾薬を使用する機関銃では、観測気球や航空機、戦車や装甲車に対して威力不足が顕著になってきていたからです。 当時、フランスに派遣されていたアメリカ陸軍のパーカー大佐は、この口径11mmの弾薬に着目します。実は同軍も、標準ライフル弾薬のスプリングフィールド30-06弾の威力に限界を感じていたのです。 そこでパーカー大佐は早速、11mm 弾を使用する重機関銃の開発を、アメリカ陸軍兵器局に上申します。ただ、在ヨーロッパ・アメリカ陸軍総司令官であるパーシング将軍は、フランス軍の試験データなども検討した結果、同弾の威力不足を確信。より優れた弾薬の開発を要望しました。

原型「M1921」は100年以上前に誕生

 これを受けて、アメリカ屈指の老舗弾薬・銃器メーカーであるウインチェスター社が、新型の大口径弾薬を開発することになりました。その際には、ドイツ軍から鹵獲(ろかく)したモーゼル対戦車ライフルの13mm弾が、極めて参考になったといわれています。 こうして、新たに12.7mm弾が誕生。同弾を使用する重機関銃も、天才銃器技師として知られるジョン・ブローニングが設計し、作られました。こうして生まれた重機関銃は、第1次大戦には間に合わなかったものの、大戦終結後の1921年に「M1921重機関銃」として制式化されました。ところが戦争に間に合うように制式化を急ぎすぎたため、銃に問題があることが判明します。 その結果、改良が施されて新たにM2と命名。こうして今に続く重機関銃が1933年に制式化されたのです。なお、この機関銃は「ブローニングM2」と呼ばれることもありますが、これは設計したブローニング技師の名前と制式番号を組み合わせたものです。

 M2は信頼性が高く、しかも当初のコンセプト通り、重量の割には優れた威力を持っていました。そのため、3脚に載せて地上設置の重火器として用いられただけでなく、ジープやトラック、装甲車から戦車まで、アメリカ軍のあらゆる軍用車両に搭載されています。なにしろ本銃を搭載するだけで、火力だけならジープやトラックも軽装甲車に匹敵するほどにまで強化できるからです。 また、M2はアメリカ海軍や海兵隊でも使用されるようになります。艦艇向けとしては、水冷型と空冷型の両方を対水上・対空兼用として制式採用。さらに陸軍と海軍の両航空隊は、M2の航空モデルを軍用機の主用搭載機関銃として採用しました。その結果、第2次世界大戦が始まるとM2の需要は著しく高まります。

ウクライナ軍も使い始めた傑作重機関銃

 たとえば、約1万3000機が生産されたボーイングB-17「フライングフォートレス」爆撃機は1機当たり10~13挺、約1万6000機が生産されたリパブリックP-47「サンダーボルト」戦闘機は1機当たり8挺を搭載していました。一方、約5万両が生産されたM4「シャーマン」中戦車も、1両に1挺ずつM2を備えていました。単純計算でもかなりの数のM2が生産されたことがわかるでしょう。 しかし、この需要はあくまでも大戦が激しさを増していたから。そのため戦争が終わると、一転してアメリカ軍内の一部から、旧式のM2重機関銃更新論が唱えられるようになります。これを受け、後継となる新型重機関銃の開発が始まりますが、その後もアメリカが朝鮮戦争からアフガニスタン紛争に至るまで、継続して戦争を行い続けた結果、新型に切り替えられることなく使われ続けています。 というのも、これらの戦争を通じてM2の評価はますます高まりこそすれ、悪評はほとんど生じなかったからです。

 こうして「100歳超えの老兵」ながら代替なき貴重な名銃M2は、現在もなお「代替なき老兵」「オールド・フィフティ」「マ・デュース(Mを「マ」、2を「デュース」と読み換え)」「ビッグ・フィフティ」などといった愛称で親しまれ、使われ続けています。 日本の自衛隊はもちろんのこと、東アジア周辺国を見渡してみても、M2重機関銃を全く使っていないのはロシア、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)、中国ぐらいなもの。韓国、台湾、フィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランド等々、使用している国の方が圧倒的に多いのが実情です。 最近では、ロシアによる侵攻を受け、祖国防衛のために戦っているウクライナ軍も使うようになっています。一説によると、全世界で300万挺以上が使われているといわれているM2重機関銃。100年以上使われることは間違いなく、もしかしたら200年選手になる可能性も否定できないかもしれません。

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