「チケットレス」に踏み切れないJR九州 事前予約しても発券で混雑…背景にある“地域事情”とは

JR九州では特急券をネット予約しても、駅で実際の券を発行する必要があります。窓口や発券機が少なく混雑が課題となっていますが、有効な解決はできるのでしょうか。

きっぷを発行する瞬間が一番大変!

 JR九州の主要駅にある「みどりの窓口」や指定席券売機で、曜日や時間帯によっては混雑が目立つことがあります。予約した指定席券をいざ発行しようと思ったら長蛇の列。肝心の列車に乗れない事態もあるといいます。 鉄道の利用が回復してきっぷを買い求める利用客が増えていることが理由ですが、さらに掘り下げると、JR九州特有の事情も見えてきます。

 JR九州では他のJR旅客会社と同様に、インターネットによるきっぷの予約ができます。ネット予約にはシートマップ(座席表)を見ながら好きな座席が選べる、発車直前の6分前までなら何度でも無料で予約を変更できる、ネット限定の割引きっぷが買えるなど数多くのメリットがありますが、「駅の販売窓口または指定席券売機できっぷを受け取る」必要があります。 その一方で、JR九州は経営合理化の観点から駅の販売窓口の数自体を減らしています。2022年3月12日のダイヤ改正時には一気に48駅できっぷの販売窓口を廃止しました。現在、みどりの窓口または指定席券売機のある駅は120駅程度にとどまります。JR九州は「指定席券売機を利用することで、窓口に並ばすスムーズに受け取りができます」と言いますが、実際には操作に手間取り発券に時間がかかる例も少なくないといいます。 こうした状況を踏まえ、古宮洋二社長は6月の定例会見で「ハード、ソフトの両面から対策を考えたい」と話しました。混雑時には駅係員を券売機付近に配置して操作方法を説明するなどの対策を講じ、「最近は以前ほど混雑しなくなった」とJR九州の広報担当者が話します。

そもそも「きっぷ要らず」が普及している時代 JR九州なぜ未導入

 利便性を考えれば、JR東日本やJR東海のインターネット予約のように紙のきっぷを発券しなくても、「登録した交通系ICカードを改札口でタッチして乗車できる」チケットレスサービスの導入が抜本的解決かもしれません。しかし、JR九州は「検討はしているが、すぐに導入する計画はない」として消極的です。なぜでしょうか。 その理由の1つとして考えられるのは、地域によるスマートフォン普及率の違いです。総務省が5月に発表した「令和4年通信利用動向調査」によれば、スマホをインターネット端末として利用している個人の割合を都道府県別に見ると、1位東京都、2位千葉県、3位奈良県、4位大阪府、5位神奈川県の順ですが、九州勢では福岡県が17位でようやく顔を出します。一方で低いほうから見ると47位秋田県、46位岩手県、45位山形県、44位宮崎県、43位熊本県と、東北と九州の各県が並びます。 JR東日本におけるチケットレス利用の実態は首都圏が中心で、東北での利用があまりなくても影響は少なそうですが、JR九州が自社エリア内にチケットレスサービスを導入しても首都圏や関西圏ほど活用されないかもしれません。チケットレス化にかかるシステム開発費を考えると、躊躇せざるをえないのでしょう。 一方で、販売窓口や指定席券売機が混雑している理由について、JR九州は「インターネット予約が想定よりも早く進んでいるため」と説明していました。そう考えると、九州でもスマホをネット端末として使う人の割合がさらに増えて、将来チケットレス化が導入される機運も高まってくるのかもしれません。

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