宇都宮“LRTフィーバー”にタクシー嘆き節 上客とられる? 通勤・通学需要は本当に生まれるか

いよいよ開業する「芳賀・宇都宮LRT」。これまで全く鉄道がなかった地域にできる次世代型路面電車の登場に、タクシードライバーからは嘆きの声も聞かれましたが、LRTは本当に沿線の通勤・通学需要を取り込めるのでしょうか。

5000円は当たり前のタクシー客が消えちゃう?

「(宇都宮駅)東口のドライバーは相当嘆いてますよ。LRT開業したら、俺も西口へ行くんだーって言っているドライバーもいます」  いよいよ2023年8月26日(土)に開業する芳賀・宇都宮LRT。その直前に宇都宮駅西口でタクシーを利用したところ、ドライバーからそんな話を聞きました。

 LRTは宇都宮駅から鬼怒川を越え、ホンダ工場の目の前にある芳賀・高根沢工業団地を結びます。ホンダも工場の関係者送迎バスを廃止し、LRTに切り替えると報じられているほか、鬼怒川東岸のニュータウンである「ゆいの杜」地区などの人口集積エリアも新たに沿線となります。 これら地域は宇都宮駅から10km以上離れ、タクシーを使えば5000円前後になることも。ゆいの杜は路線バスも通っているものの、本数は満足とはいえず、ドライバー曰く「タクシーしかない地域」です。鬼怒川東岸の住民や、自動車関連企業の出張客といった遠距離の“上客”が、LRTに奪われる構図は想像がつきます。 とはいえ、クルマならば駅から延びる鬼怒通りをまっすぐ進み、20~30分ほどでゆいの杜やホンダまで到着しますが、LRTは大きく迂回する線形です。鬼怒通りより南の清陵高校や清原工業団地を経由するため、全線乗り通すと48分かかります。 これら通勤・通学需要を取り込むことで、LRTは平日1日あたり約1万6000人の利用が見込まれており、自家用車からの転換で周辺の渋滞緩和につなげることも狙いとされています。ただ、運営会社である宇都宮ライトレールによると、開業5日前の8月21日(月)時点で、定期券の申し込みは“150件”とのこと。「今週から増えていくと見込んでいます」と付け加えられましたが、地域にとって体験したことのない乗りものでもあるため、様子見の人も相当多いと考えられます。

タクシーの嘆きは杞憂?

 この地域はクルマ社会であるうえ、宇都宮駅から8km以上離れた清陵高校の生徒なども、多くは自転車通学です。これらの人をどれだけLRTへ転換できるかが、今後を左右するでしょう。ひょっとすると、LRTを避けてタクシーを選択する人も一定いて、冒頭のタクシードライバーの嘆きが杞憂になる可能性もあります。 ちなみに、LRTは今後「快速」の設定が予定されています。2021年の発表では、全線の所要時間が38分になるとされており、時間短縮の余地は残されています。 しかしながら、LRTの整備目的としては単なる通勤・通学手段というだけでなく、人口減少のなかで新しい人の流れ、新しいライフスタイルを創出し、経済活動を停滞させないための起爆剤となることなどが掲げられています。LRTの整備で「地域が変わった」と実感できるような、副次的な効果が現れることこそが、その真価といえるかもしれません。

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