やっぱりキング・オブ・深夜バス 西鉄「はかた号」個室 従来型にあって新型にないものとは

バスタ新宿~博多バスターミナル間1097kmを14時間かけて運行する「はかた号」は、「キング・オブ・深夜バス」として知られる長距離バスです。その魅力は豪華な車内設備とサービス。個室型座席「プレミアムシート」に乗車してみました。

高速夜行バスの頂点に君臨

 バスタ新宿に発着する高速バスは1日約1200台(2023年7月実績)。中でも最長距離を走るひとつが、西日本鉄道の「はかた号」です。その距離は博多バスターミナルまで約1097kmに及びます。 所要時間は、福岡行きが14時間17分、東京行きが14時間39分。1990(平成2)年に運行開始し、長らく「日本最長距離を走る高速バス」であったことから、テレビ番組でも「キング・オブ・深夜バス」として紹介されました。

「はかた号」は豪華な車両設備でも知られてきました。運行開始時は、サロン付きの3列シートバスで定員23名の豪華仕様。そこからサロンなし車両を経て、2009(平成21)年より2階建て車両となりました。この時に、現代まで続く1+1列「プレミアムシート」を導入しています。このプレミアムシートは2階建てバスの最前列に4席のみで、テレビやマッサージ器具まで設置された豪華仕様でした。 2階建てバスは2014(平成26)年にスーパーハイデッカーと交代。この際に、プレミアムシートは個室化され、4室設置されました。プレミアムシート以外も1+1+1列の「ビジネスシート」で、長時間利用でも疲労が残りにくい快適な座席を備えています。 2023年現在は、2014年に導入された従来型と、2020年に導入された新型のどちらかで運行されています。2023年7月、「はかた号」のプレミアムシートに乗るべく、筆者(安藤昌季:乗りものライター)はバスタ新宿にやってきました。「小倉・福岡」行きという表示に、旅情をかき立てられます。なお隣のバス停に、「はかた号」より走行距離がわずかに長い(東京駅からバスタ新宿を経由するため走行距離は約1110km)、オリオンバスの東京~福岡便が停車していました。「はかた」号の到着の瞬間は、福岡行きの長距離バスが並び、夢の競演です。

いざプレミアムシートへ

 個室バスの常ですが、バス停から見た雰囲気がほかのバスとは異なります。個室内が見えるため、明らかに高級感があるのです。 乗車当日は従来型のバスでした。到着とともに最前列の1A個室に入ります。従来型でも新型でも、プレミアムシート4室、ビジネスシート18席は変わりありません。従来型プレミアムシートでも、革張りの電動リクライニングシート、肘掛内テーブル、専用空気清浄器、コンセント、スリッパ、無料Wi-Fi、読書灯、ゴミ箱を備える点は一緒です。

 座席は、充分にリクライニングし、レッグレストと連結すると体も伸ばせます。最大リクライニング角度は150度、座席幅は50cmあります。個室バスとしてはやや控えめですが、充分に快適です。ただ、やや固めなので、衣類などで枕を作った方が寝心地よいと感じます。なお、荷物置き場が床置きと、個室上部の狭い荷物棚だけなので、JRバスのように「小物が入れられるレッグレスト」が欲しいと感じました。 背もたれにはマッサージ機能や背面ヒーターが備わっており、カーテンは横引きです。 長距離路線なので、運転士は2人乗務です。出発すると、運転士より安眠グッズと緑茶が配られます。飲料サービスにおもてなし感を覚えます。安眠グッズはさらさらパウダーシートとホットアイマスクです。室内灯は操作できますが、アイマスクは助かるという人も多いでしょう。 バスの後部は1+1+1列のビジネスシートで、プレミアムシートとの間を扉で仕切ります。簡単に開けられるので、プレミアムシート内に設置されたトイレに行くのに不都合はありません。トイレは一般的な高速バスに設置されたタイプで、一部の豪華個室バスにある化粧室などは設置されていません。 なお、ビジネスシートも本革の座席で、充分にリクライニングします。全席にフェイスカーテンもあるので、個室感覚で過ごせます。

最前列個室だけの特典「プライベートガラス」機能とは

 出発から2時間半後の23時30分ごろ、静岡サービスエリアで15分休憩停車します。14時間走行するうち停車休憩は2回だけ。買い物ができる貴重な機会です。調達が難しい飲み物を買い込みます。 静岡サービスエリアを過ぎると消灯です。個室席は室内灯を付けておけるよさがあります。揺れも少なく、寝心地は快適。筆者は備え付けの毛布を、座席のクッションを補強するため下に敷き、上着を布団替わりに就寝しました。

 翌朝8時ごろ、山陽自動車道の佐波川サービスエリアで2回目の休憩です。コンビニがあるだけでレストランなどはなく、ちょっと淋しい場所でした。 朝になったところで、最前列1A、1B個室だけの特典「プライベートガラス」機能を使います。個室の進行方向前方に設けられたスモークガラスを透明ガラスに変え、前方が見られる機能です。後で車庫取材にて確かめましたが、運転席側の1B個室が最も眺望に優れているようです。 9時5分、関門海峡を渡る関門橋を通過します。鉄道では海底トンネルのため、海が見えるのは新鮮でした。 9時30分。定刻の9時51分よりかなり早く、小倉駅前に停車します。ここでは半数近くの乗客が下車しましたが、続く砂津や黒崎インター引野口では下車客がおらず、「はかた号」は西鉄天神高速バスターミナルへ。その後は15分ほどでJR博多駅に隣接する博多バスターミナルに到着です。 14時間を超えるバス旅でしたが、プレミアムシートでは疲労も残らず、終始快適でした。

車庫で新型にご対面!

 ところで新型の「はかた号」はどんな車両なのか、筆者は今回、西鉄バス博多営業所でそちらも取材することができました。 従来型と比べ、プレミアムシートは横幅が6cm拡大されており、クッション性もかなり増しました。枕も備え付けられ、かなり快適です。付帯機能はあまり変わりませんが、カーテンが横引きからロールカーテンとなり、ワイヤレス携帯充電器が設置されています。また、荷物置き場が省略されたものの、動かせる足置き台が追加されていました。読書灯は可動式ではなく、天井設置に。惜しむらくは個室内の「プライベートガラス」がなくなり、前面展望が楽しめなくなったことです。

 ビジネスシートにも着座しました。本革とモケットの組み合わせは変わりませんが、ダブルクッションとなり、座り心地は向上しています。リクライニング角度は143度、座席幅は46cmです。 従来型もご厚意で見せて頂きました。清掃員が「これ、知っているかな」と、プレミアムシートの荷物棚から黒いシートカバーを取り出します。 清掃員によると、2階建てバス時代のプレミアムシートに搭載されていた、座席の上に置くマッサージ器具とのこと。全席に設置されているわけではなく、一部にのみ搭載されているため、運がよければ使えるという裏メニューのようなものです。思わぬ旅のアクセントですが、今回筆者が乗車した車両では、お目にかかれませんでした。

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