
初来日が航空ファンのあいだで話題となっているフランス空軍の「ラファール」戦闘機。この機の海軍バージョンの脚部には、オレンジ色の箱が設置されています。どのような目的で設置されているのでしょうか。
海軍型の「M型」に設置
フランス航空宇宙軍(空軍)のラファール戦闘機が2023年7月に初めて来日し、航空自衛隊と共同訓練を実施することが、航空ファンのあいだで話題を呼びました。今回のラファールは空軍向けのC型で、このほか仏海軍も、ラファールM型を空母シャルル・ド・ゴールに載せています。 2023年6月に行われたパリ航空ショーでは、このM型も展示されていましたが、この機体はC型のものより、脚が太く頑丈にできているという特徴があります。そして、M型の脚には、C型にないオレンジ色の箱が追加されていました。いかにも後付けされたようなこの箱は、一体どういった目的で設置されているのでしょうか。
この箱に近づくことはできなかったため、数メートル離れて観察しましたが、箱はボルトなどで支柱に固定されているように見えず、いかにも支柱の上に置かれているといった形でした。傍らに置かれた説明板によると、箱は「inertial unit communicates」と呼ばれ、自動で検査を行うドローン用の通信機器とのことです。 検査用ドローン自体の展示はありませんでしたが、このドローンはラファールを離れた距離で俯瞰したり横を飛んだりして、外板の破損や機体の構造にゆがみなどがないか調べるのを目的としています。ラファールの製造元ダッソーと、ドローン開発会社ドネクルが開発し、AI(人工知能)を使っているとのことです。
「ドローン用の通信機器」どんな役割が?
ドローンによる検査を正確に行うためには、機体が動かないことが前提です。しかし、地上の格納庫内と異なり航海中の空母は波浪を受けるため、ラファールMも同時に揺れてしまいます。 冒頭のオレンジ色の箱はマッピング機能を搭載しており、揺れによるラファールMの位置を補正して通信でドローンに伝えて、正確な検査を行わせる役目を持っています。 ドネクルによると、自動ドローンによる検査はこれまでの手法に比べて10倍早く行うことができるということです。 検査用ドローンは、仏海軍のアトランティック2対潜哨戒機でも試験され、今後10セットが仏軍全体に納入されることになっています。 ドローンにより省力化された整備は、平時、そして実戦でも役立ちます。パリ航空ショーでラファールMの解説をしていた海軍士官は、「開戦初日の出撃から帰還した後に機体の異常を素早く把握でき、再出撃への時間が減る」と話していました。実戦では対空兵器の回避などの際、制限荷重を超えた激しい動きをする機体もでるでしょう。こうした機体が第2波の攻撃を問題なく行えるか、はなはだ実戦的な視点で、これらの機器は開発・搭載されていました。 検査ドローンはこれから陸上基地も含めて納入されるため、来日するラファールCが支援機材として日本に運び込むことはなさそうです。しかし、こうした検査態勢も実戦に即して築く仏軍全体から航空自衛隊が学ぶ機会を得たことは、日本の安全保障力を一層高めるでしょう。同時に、ドローンの活用は前線ばかりでなく、広範囲に及んでいることも分かります。