
東海地方の広域ネットワークを形成する高速道路「東海環状道」が全通をめざし工事中。三重~岐阜県境の養老トンネルでも掘削が進められています。将来の4車線化まで想定した2本のトンネル建設現場には、“鉄道”もありました。
2026年の全通までもうすぐ
名古屋近郊から延びる5本の高速道路をぐるっと環状につなぐ、総延長約153kmの高規格幹線道路「東海環状自動車道」が、全通間近となっています。
東海環状道は新名神(新四日市JCT)から、名神(養老JCT)、東海北陸道(美濃関JCT)、中央道(土岐JCT)、新東名(豊田東JCT)をつなぎます。残る未開通区間は西回り部の「大安~北勢~養老」「大野神戸~山県」の2区間43.5kmで、2026年に全通の予定です。 その最後の区間になると見込まれる北勢~養老では、長さ約4700mとなる「養老トンネル」の掘削が進行中です。三重・岐阜県境に連なる養老山地をつらぬく長大トンネルで、両県側から工事が進んでいます。 北側からは2022年9月、南側からは2023年3月に掘削開始。北側では本坑が約300m、避難坑が約500mのところまで掘り終わっています。1回の発破とコンクリート吹付作業で1m分が進捗し、1日あたりのペースは4mだそうです。 本坑・避難坑と2本のトンネルが掘り進められていますが、このうち避難坑は当面、緊急時の脱出経路として使われます。本坑の2車線で暫定開通し、将来の4車線化にあたり、避難坑が活用されます。東海環状道の4車線化は豊田東JCT~土岐JCTが完成済みで、その先の可児御嵩IC付近までが現在進行中です。 さて、養老トンネルでは4月26日に現場公開が行われ、実際に掘削現場を見学することができました。
安全のため発破現場は毎回「お化粧直し」
当日は安全上の理由から掘削作業は休止となっていましたが、その代わりに、使用される建機が本坑トンネル内に並んでいました。 具体的には、ダイナマイトを差し込む穴や岩盤を支えるロックボルトを打ち込む穴をあける「ホイールジャンボ」、発破した岩盤くずを搬出するトラクターシャベルや25tダンプトラック、コンクリート吹付や支保工設置を行う重機、大きな岩石を砕く大型ブレーカなどです。いずれもトンネル工事以外にはほとんど見られない、スケールの大きな重機です。 本坑の掘削の最前線部は土がむき出しではなく、やけにきれいな壁に見えます。これは発破しっぱなしにせず、毎回、コンクリートを吹き付けているのです。手間が余計にかかりますが、側壁の支保工やコンクリート吹付け、ロックボルト打込みの作業中に突然崩れることのないよう、十分な安全対策として行っているものといいます。 もう一方の避難坑は、掘削長がすでに500m。こちらは暫定貫通のため断面が狭く、人の移動も岩盤くずの搬出も大変なので、線路が敷かれ、バッテリー機関車によるトロッコが運行されています。トロッコは2両の“客車”を連結して報道陣を乗せ、「おじいさんの時計」のメロディを流しながら、狭いトンネルをゴトゴトと奥へ。約2分半後、掘削現場の手前で下車して担当者の説明を聞きました。 養老トンネルは南側からもすでに約100mが掘削済み。両方向とも今のところ掘削は順調とのことで、残り3年をかけて貫通、舗装や電気設備などを完成させ、開業を迎えることとなります。 ところで、近年のトンネルは5000mを超えない長さで設計されるケースが各地で見られます。養老トンネルこそ4700mですが、ギリギリの例として新名神の箕面トンネル(4997m)、中部横断道の樽峠トンネル(4999m)、三遠南信道の青崩峠トンネル(4998m)など多数あります。
【動画】養老トンネルの作業用トロッコ列車に乗ってみた!