
東京駅の地下街は、丸の内・八重洲だけでなく、さらに外側へ広大に伸びています。これらは一体どこまで広がっているのでしょうか。気になって、端から端まで歩いてみました。
東京駅の地下通路を探検
地下の果てを見たことがあるだろうか――。 東京駅周辺は、複数の地下鉄駅が位置し、ビルが立ち並び、それらが絡み合うことによって複雑かつ広大な地下通路が構成されています。これらは一体どこまで広がっているのか……? ふと気になり、周縁部をなぞるようにして歩いてみることにしました。
探検のスタート地点は東京駅、丸の内地下中央口です。2016年に開業した地下街「グランスタ丸の内」があり、人通りが多くにぎやかです。改札を出るとすぐのところに「東京駅総合案内」として2キロ四方が描かれた地図が掲出され、グレーで「地下通路」も描かれています。 これによると地下通路は、西側が皇居に沿って走る日比谷通りまで、また北側は、首都高都心環状線の少し手前まで、東側は東京駅東側の八重洲地下街であることがわかりました。「な~んだ、もう答えは出たようなもの!」と安堵するのは早計、南側は地図に収まりきっておらず、「有楽町方面」と書かれているのみ。まだまだ全容が明らかではないのです。
まずは西と北の終点を目指す
よくわからない部分は後回しにして、手近なスタート地点としてまず西の端を目指すことにしました。最初にぶちあたるのは丸ノ内線東京駅です。その先へは「行幸地下ギャラリー」が通じているはずなのですが、通路そのものに「東京都行幸地下ワクチン接種センター」が開設されているため通行不可! 出鼻をくじかれた感じですが、案内「丸の内ビル、三菱商事ビルの地下通路を迂回せよ」に従って歩いていくと、千代田線二重橋前駅に到着。地上でいうと和田倉門の交差点にあたります。時刻は14時50分。「1時間あれば一周できるだろう」と甘い予想を立てていた頃です。
この先は時計回りに進むことにして、三田線、千代田線に沿いながら北上。三田線大手町駅、千代田線大手町駅、東西線大手町駅への案内を順番に眺めていきます。 半蔵門線大手町駅を過ぎてさらに北へ行くと壁にぶつかり、北西の端「C2b号出口」で「経団連会館」に到着です。地上では大手町一丁目の交差点、さらに首都高速都心環状線の神田橋出入口が見られました。 ここから東へ地下道は伸びていきます。案内図によれば、3棟のオフィスビルで構成される「大手町フィナンシャルシティ」の中を通っているようです。飲食店が並んでいるものの、日曜だったことから、どこもかしこも定休日で、人の気配はほぼありません。ひと区画歩くと、東側の突き当りとなります。 南下を試みると、目の前に現れた丸ノ内線大手町駅に阻まれます。地下2階につながるエスカレーターを隅っこに発見。控えめな案内に従い、「東京サンケイビル メトロスクエア」に進入、やがて半蔵門線・丸の内線大手町駅に至りました。 最初に確認した地図によれば、「大手町野村ビル」内を南下していけば東西線へ抜けられるはずでしたが、そこには「日・祝日 閉鎖」と書かれた分厚い扉が。来た道を戻り、西側で並行する「大手町ビル」内の「東西線連絡通路」を歩いていきます。 徐々に人が増え、通路も賑やかになってきました。「よかった!知ってる景色」の声がどこからか聞こえます。同じようにビル内をさまよい、不安を覚えた人でしょう。「八重洲口、日本橋口」の案内を横目にまっすぐ進んで突き当りに到着。「B10号出口」から地上に出れば、外堀通りの呉服橋交差点でした。いつの間にかJRの東側に抜け、日本橋駅や三越前駅の近くまで来ていたのです。
南側はどこまで続いている?
次は南東の果てを目指すべく、東京駅方面へ戻り、エスカレーターを上れば、にぎやかな「東京駅一番街」に入り込みます。大きな荷物を抱えた観光客も多く、すり抜けるようにして通路を歩きました。大丸百貨店を経由して、八重洲地下街へ。近くの地図を確認すると、地下街全体は南北にのびる複数の通路、および中央部から東へと突き出ている通路で構成されており、「ト」の字形であるとわかりました。その東へ突き出た先端の部分まで向かい、地上に出れば、そこは日本橋三丁目の交差点。少し先には日本橋高島屋が見えました。 さて、八重洲地下街をどんどん南下し、グラン東京サウスタワー、パシフィックセンチュリー丸の内地下1階を抜けると、京葉線の広いコンコースに出ます。丸ノ内方面へ少し歩き、左手に東京国際フォーラム「地下コンコース」を歩いていけば、有楽町線有楽町駅に到着です。ビックカメラ有楽町店横の階段をのぼれば、眼前にJR有楽町駅が迫ります。いつの間にかJRの西側へ抜けていたようですが、地下街はこの先、再びJRの東側へ戻ることになります。
有楽町駅東側で地下街はそのまま網の目につながっており、東京交通会館、有楽町イトシアビルと続きます。食事を楽しんでいる人たちが羨ましく思えてくる17時20分、いよいよ出発時に「地図の外側」だった未知のエリアへ足を踏み入れました。 ビルからビルヘ地下街を抜け、丸ノ内線銀座駅に到着したあたりで、「そろそろ終わりたい」の気持ちがこみ上げ、「東京駅地下迷宮は、ここからすぐの銀座駅がゴールに違いない」と勝手な推測をはたらかせます。ところが、近くの案内図には、南東の方角に「東銀座駅」と書かれているではないですか。まだまだ先がありそうです。 地下鉄の父、早川徳次の胸像、日比谷線銀座駅を通過したところで、「有楽町線銀座一丁目駅」への案内も出てきてしまうのですが、小さく「地上乗り換え」と書かれていたことで救われました。地下街としてはつながっていないため、今回の探索の対象外です。 銀座線銀座駅を回り込み、日比谷線東銀座駅、突き当りに浅草線東銀座駅が現れ、ようやく南東の果てに到着しました。地上でいうと、三原橋交差点にあたり、北西の端である経団連会館からはすでに4キロ以上離れています。
徒歩8kmの大旅行 東京駅地下は広大だった
あとは南西の端を目指すのみ!無の心で歩き続ければ、西の縁、すなわち日比谷通りの地下にまで戻ってきました。日比谷線日比谷駅、千代田線日比谷駅の改札前を通過し、南下して突き当たったところで南西の端に到着です。地上でいうと、日比谷公園の日比谷門の位置にあたります。このとき18時5分。日はとっくに暮れ、向かいの帝国ホテルでは、イルミネーションがきらきらと光を放っていました。
最後は、三田線日比谷駅、有楽町線日比谷駅を横目にまっすぐ北上し、18時24分、千代田線二重橋前駅まで戻ってきました。和田倉門交差点を拝むべく地上に出れば、視界に入ってきたのは東京駅を背景にウエディングフォトを撮影しているグループでした―― 東京駅から地下を経由すれば濡れずに大手町から東銀座、そして日比谷まではるばる行けると判明したこと、またその行き方を把握できたのは大きな収穫です。ただし、今後の人生で実用に資する機会が登場するかは、今のところわかりません。