「タラコが空飛んでる!?」 超異形「総2階建てプロペラ旅客機」の伝説 迷機に終わったワケ

ボーイング747やエアバスA380が就航する遥か前、フランスでは、2階建て客室を持つ異形の旅客機、通称「デュポン」シリーズが開発されました。その形状はまるで「空飛ぶタラコ」のよう。どのような飛行機だったのでしょうか。

1949年2月15日初飛行

 2023年1月に生産終了を迎えた「ジャンボジェット」と呼ばれたボーイング747や、「世界最大の旅客機」ことエアバスA380といった超大型旅客機は、胴体を2階建てとするデザインが特徴です。しかし、2階建て客室を持つモデルの歴史は古く、1940年代にはすでに存在していました。 そのひとつが、1949年2月15日に初飛行した、フランス・ブレゲー社の通称「デュポン」シリーズです。この機はフランス初の2階建て旅客機であり、横から見ると「タラコ」のようなユニークな形状を特徴としています。

「デュポン」シリーズは全長約29mで全幅約42m(量産化されたBr.763の場合)。総2階建てということで、胴体断面は下方向にやたら広がった長方形の箱のような形状を特徴とします。 ブレゲー社は、のちのエールフランス航空につながる「CMA」を設立したルイ・チャールズ・ブレゲー氏により設立された航空機メーカーです。「デュポン」シリーズの開発は1940年代中盤から開始。試作機である「Br.761」で初飛行したのち、エンジンを出力の高いものに変更したほか、翼幅の延長などの設計変更が行われ、完成機は「Br.763」としてエールフランス航空で就航しました。

20機程度しか開発されなかった「デュポン」…でも活躍も?

「デュポン」シリーズの民間向け主力モデルであるBr.763は、2階席に59人が乗れる標準クラス(ツーリストクラス)を、1階席に48人が乗れる上位クラスを配置した2クラス107席構成とするのが標準的でしたが、最大135人の座席仕様も検討されていたそうです。そして、エールフランス航空では、この旅客機に「プロヴァンス」の愛称が与えられました。 しかしBr.763は12機で製造が打ち切られ、エールフランスでの旅客便運航も10年程度。そののちに一部は同社の貨物機として、一部はフランス空軍に移管され輸送機として運用されました。これは、巡航速度も400km/hに満たないなか、ジェット旅客機「シュド・カラベル」を始めとする圧倒的にスピード優位な旅客機が出現し、担当路線(アルジェリア線やロンドン線)が奪われてしまったことなども理由とされています。 その一方で、フランス空軍からはその性能が高く評価され、同軍向け軍用輸送機タイプの派生型、Br.765「サハラ」も開発。軍民ともに、容積も大きく降着装置の安定性も優れていたことなどから、輸送機としては”いぶし銀”の活躍を見せました。「デュポン」シリーズ通しての製造機数は20機程度。ヒット機にはならなかったものの、死傷事故を発生させたことがないなど、安全性に優れていたともされています。

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