深刻なドナー不足 命を未来に繋ぐ臓器提供

難病で臓器移植が必要な子どもたちは多くの場合、何年もドナー(臓器提供者)を待つことになる。ドナーが見つからず、手術を受けられないまま亡くなるケースも少なくない。脳死と判定された人からの臓器提供が可能となった「臓器移植法」の施行から25年以上経った現在も、生前に臓器提供の意思表示をしている人は約1割程度と伸び悩んでおり、意思表示をしてもらうための啓発が課題となっている。

■マイナンバーカードや運転免許証での意思表示

平成9年に臓器移植法が施行された当時は、脳死後の臓器提供には書面による本人の意思表示と家族の承諾が必要だった。また、意思表示は15歳から有効とされたため、小さな子どもが移植を受けられる確率はわずかであった。平成22年に臓器移植法が改正され、本人の意思が不明でも、家族の承諾があれば脳死後の臓器提供が可能となり、また、15歳未満の場合でも家族が承諾すれば、脳死後の臓器提供が可能となった。

臓器提供に対する本人の意思が不明である場合、家族が臓器提供をするか否かを判断することになる。本人の意志が不明な中では、家族の同意が取れない場合が少なくない。生前に家族と話し合い、臓器提供の可否に関わらず、健康保険証や運転免許証、マイナンバーカードに設置されている意思表示欄に意思を残しておくことが重要である。

■臓器提供の基準となる「脳死」とは

脳死状態といえども、生前に臓器提供の意思表示を残しておくことに恐怖を感じる人や、家族が気持ちを割り切れない場合もあるのではないだろうか。
人間の脳は、知覚や記憶、感情などの心の働きを司る大脳、運動などの働きを司る小脳、呼吸や循環機能など生命維持に必要な働きを司る脳幹の3つで構成されている。大脳と小脳は損傷を受けても回復する可能性があるが、脳幹は機能を失うと生命を維持することができなくなる。臓器移植法では、脳幹を含む脳全体の機能が失われて回復しない状態を「脳死」と定めている。

一方、植物状態は脳幹の機能が残っている状態を指す。自発呼吸ができるケースが多い植物状態からは回復する可能性があるが、脳死から回復する可能性はない。日本で脳死判定が行われる場合、必要な知識、経験を持つ臓器移植と無関係な2
以上の医師が6時間の間隔をあけて2回の検査を実施し、「脳死」を判定する。子どもの場合は脳の回復力が高いため、6歳未満の脳死判定は24時間の間隔をあけて2回の検査を実施するが、生後12週未満の小児は脳死判定の対象から除外される。

■臓器提供について家族と話し合う機会を

いざ判断が必要な時に、家族と話し合う時間を設けるのは難しい場合もある。生前から臓器提供への自身の意思、家族の意思について話をすることが大切だ。脳死とはどのような状態のことなのか、臓器提供をすることによって救われる命があることなどをまずは知り、その上で家族と話し合っておくことで、いざ判断が必要な時に残された家族が迷ったり後悔したりするケースが少なくなる。自殺率が増えている今日、命の大切さや家族の絆を再確認する機会になるかもしれない。

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