ああ、空母サンパウロ沈んじゃった… 思えば退役前から問題だらけの艦だった?

ブラジル海軍の旧空母「サンパウロ」。処分の方法をめぐって紛糾し、ブラジル沖を漂っていましたが、ついに同海軍の手で沈められてしまいました。思えばこの艦は、就役当時から問題続きでもありました。

2月3日ついに問題の空母が処分されてしまう…

 ブラジル海軍は現地時間の2023年2月3日、旧空母「サンパウロ」を同国の沖合350km、水深5000mの海底に沈めて処分したと発表しました。

 元々トルコで解体されるはずだった同艦は、船体にアスベストが大量に含まれていたことで、入港を拒否され、帰ってきたブラジルでも寄港が許されず、2022年10月以降、同国ペルナンブコ州沖を漂流していました。同艦処分の問題に関しては、様々な紆余曲折がありましたが、実はこの空母「サンパウロ」、退役前から問題続きの艦でもありました。 同艦は元々、フランスで クレマンソー級航空母艦「フォッシュ」として1963年7月にデビューしました。それを2000年11月にブラジル海軍が買い取り「サンパウロ」として再就役。当時のブラジル大統領であるフェルナンド・エンリケ・カルドーゾは、「サンパウロの就役は、国家の利益を防護する能力において、重要な拡大を我が海軍力にもたらした」と誇らしく述べましたが、既に就役からかなりの年月が経っていました。同艦は最初の3年こそ様々な任務をこなしたものの、その後は問題が頻発します。 フランスは同艦を1200万ドルという格安の値段で売却しましたが、フランスメディアの一部報道によると、今後満足に動かすには、約8000万ドルの修理が必要だったという話もあるようで、ブラジルに渡った時点から決して良好な状態の艦ではなかったことがうかがえます。

問題頻発で予想以上に高い買い物に!

 まず2005年5月同艦で火災が発生しました。原因は蒸気パイプラインの破損で、修理により約4年間、艦隊を離れます。この後、同艦は事故の損傷修理と近代改修のため、2010年まで断続的にオーバーホールを繰り返すこととなります。

 近代化が行われた後も、エンジン、推進シャフト、カタパルトなどで不具合が頻発し、老朽化したパーツのスペア不足にも悩まされます。そして2012年2月に再び大規模な火災が発生。以降同艦はほとんど任務につくことがなくなり、スポーツの世界でいうところの、鳴り物入りで入ったにも関わらず、故障続きで実績を残せなかった助っ人外国人選手のような状態になります。 それでも当初ブラジル海軍は同艦を2039年まで使う予定でしたが、修理や改修で莫大なコストがかかることが判明し2017年2月14日、海軍は近代化計画を打ち切り、運用終了を発表し、解体することとなります。 退役後は前出の通り、2022年8月にアスベスト問題でトルコが受け入れ拒否すると、3か月ほどブラジル沖を漂流。同艦を沈めることに関しては、環境団体が猛抗議し、ブラジル連邦検察庁も、環境汚染を防ぐため沈没の不許可を裁判所に求めました。しかし、ペルナンブコ州の裁判所は、損傷が確認され、安全な航行ができない元空母を曳航しているタグボート乗組員の命を危険にさらすことはできないとして、要請を退けました。 また、ブラジル国内で旧空母の今後を巡って、激しく論争が続く最中の1月31日、サウジアラビアの会社が同空母を3000万レアルで買い取りたいと提案したという報道もありました。そのためブラジル海軍は、自沈計画を一時中断しましたが、同艦の浮力と安定性に問題が発生していたこともあり、具体的な交渉には入らなかったようです。 実は同艦の姉妹艦である「クレマンソー」も、1997年10月に退役したにも関わらず、アスベストの問題でたらいまわしにされ、2009年2月にイギリス北東部のハートルプールの造船所で解体が決定するまで、フランスのブレスト港に長らく置かれていました。姉妹艦も、それと同じ道をたどったことになります。

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