何のため? インド空軍が「フランカー」訓練で百里基地に設置した“謎の板”の正体

2023年1月、史上初めてインド空軍のSu-30MKI戦闘機が航空自衛隊と共同訓練を行うため、茨城県の百里基地に展開しました。そこで彼らが持ち込んだ整備機材のなかに見慣れないものが。その詳細について航空自衛隊に聞きました。

インド空軍がC-17で運んできた “デカい板”

 茨城県にある航空自衛隊百里基地では、2023年1月16日(月)から26日(木)までの日程で日印戦闘機共同訓練「ヴィーア・ガーディアン23」が行われており、それに合わせてインド空軍のSu-30MKI戦闘機4機がこの地に派遣されています。インド空軍の戦闘機が訓練目的で日本に飛来するのは史上初であることから、百里基地の公式Twitterでは軽快な語り口とともにインド空軍に関する投稿が続いています。

 そのようななか、1月12日には、百里基地のランプエリア(航空機を駐機する場所)に見慣れないインド空軍の機材が設置されたとの投稿がありました。それは金属製の巨大な傾斜板で、該当する投稿には「Su-30のエンジン試運転用デフレクター(整流板)」との説明書き。航空自衛隊にこの詳細を聞いてみました。 説明によると、これ自体はインド空軍が来日時にC-17輸送機で本国から輸送してきた機材で、百里基地ではインド空軍の軍人らが設置し、クレーンなど重機での支援を百里基地の消防小隊が行ったそうです。 これは、Su-30MKI戦闘機のエンジン地上試運転用に持ち込んだ機材のひとつだそう。戦闘機がエンジンの試運転を行う場合、高温で強烈なジェット排気が機体後方に噴射されるため、何もない場所で試運転を行うと基地内の建物や駐機する他の航空機に影響を及ぼすのだそうです。そのジェット排気を受け止めるのがデフレクターの役目だということでした。

空自の戦闘機はどうしている?

 デフレクターは土台部分が金属製のフレームになっており、それに斜め45度の角度でジェット排気の受け身部分が設置されています。受け身部分は一枚の板ではなく、小さい板状の部品が均等に並べられ、全体がブラインドのように隙間だらけの形状をしています。 板状の部品は地面に対して垂直に設置されているため、ここに横から当たったジェット排気は上下に散らされるような形となり、高温高圧のジェット排気が機体の周辺に吹き付けないようにしてくれます。

 また、このデフレクターはジェット排気を受けるだけでなく、試運転を行う機体を地上に固定する役割もあります。デフレクターの左右両端には太い鉄製のケーブルが2本繋がっており、地上試運転時にはSu-30の機体に各々繋ぎます。戦闘機の車輪には機体を停止させるブレーキは付いていますが、エンジンを高出力運転した場合はブレーキだけで機体を固定することはできないため、このような固定器具が必須となります。 なお、百里基地には戦闘機の地上試運転用にサイレンサーと呼ばれる専用の設備がありますが、今回のインド空軍のSu-30MKIはそれらを利用することはできないため、自らデフレクターを用意し、設置することになったようです。 百里基地には今回のインドだけでなく、昨年にはドイツの戦闘機も飛来しており、他国の軍用機が国内の基地で活動するのも珍しいことではなくなりつつあります。今回は、インド空軍機の日本初飛来でロシア製Su-30「フランカー」戦闘機などが注目されていますが、他国との共同訓練が増えると、このデフレクターのような航空自衛隊にはない支援機材の登場も、今後は増えていくのかもしれません。※誤字を修正しました(1月26日10時57分)。

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